漁協による流木の一斉回収作業には、多くの漁業者が参加した=2017年7月、佐賀市川副町

 福岡、大分県境の山間部を中心に多大な被害をもたらした九州北部豪雨から5日で1年。山腹崩壊によって発生した大量の流木が、佐賀県内の海や川にも流れ着き、関係機関が回収や処理に追われた。国は緊急対策を実施しているが、立木の流出を防ぐ有効策は見いだせていない。県内では流木を処理できる施設の確保が課題に挙がり、早急な体制整備が求められている。

 昨年8月末までに県域の有明海や沿岸で回収された流木は、2012年の九州北部豪雨の2・4倍にあたる約2万2千立方メートル。県や市町が回収したほか、県有明海漁協も一斉作業を2度実施した。

 漁業者の率先した活動もあってノリ養殖に大きな影響は出なかったが、海中にはまだ流木が残るとみられ、網を使う漁船漁業への影響が懸念される。5月には早津江川沖で、数年間漁業者を悩ませていた長さ10メートル超の木が網が巻き付いたまま引き上げられた。あるノリ漁業者は「沈んでいる木があると安心して漁ができない」と不安がる。

 林野庁によると、九州北部豪雨での山腹崩壊の深さはほとんどの地点で地表から3メートル程度あり、10メートルを超えるケースもあった。根の長さより深く表層を崩す豪雨を想定すると、深刻な流木被害は全国で発生する恐れがある。

 こうした状況を踏まえ、国は約4300億円をかけて治山、治水の緊急対策を実施している。20年度まで3年計画で、危険性が高い地区や中小河川を全国で指定し、流木を食い止める機能を持つダムやせきを整備、河道の掘削なども行う。

 県内では流木の処理が課題として残る。流木に含まれる塩分が焼却炉を傷める原因になることなどから公的な処理場では対応できず、昨年は民間業者に委託して焼却や埋却などを行った。全量の委託を終えたのは今年1月で、今も処理作業を続けている業者もある。

 この業者は「通常の業務と並行しての作業になるため、どうしても時間がかかる」と現状に触れ、行政に対して流木の仮置き場を事前に確保し、県外の業者にも処理を依頼する態勢を整えるよう求める。

 処理能力に限界がある中で、場所を選ばない流木被害にどう備えるのか。県森林整備課は「適切な間伐によって根を育て、森林機能を維持・向上していく取り組みが欠かせない」と指摘。佐賀大学大学院の大串浩一郎教授(水工学)は「都市部から見ても上流域は防災機能を果たす大事な地域であり、都市計画まで視野に入れた幅広い対策が必要」と話す。

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