佐賀新聞社は6月20日、小城市の小城高(永田彰浩校長)で1年と3年の計約480人を対象に主権者教育の出前授業を開いた。成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が成立したことを受け、1年生は「18歳は大人か否か」との問いに思いを巡らせた。一方、3年生は教諭たちを候補者とした模擬選挙を通して投票時の判断基準について考えた。大人の定義や社会へ参加する意義を知り、主権者としての意識を高めた授業の内容と生徒の感想を紹介する。

 

【3年生】 先生=候補者で模擬選挙

 

 3年生約240人は、小城高の教諭4人を立候補者に見立て、投票先を選ぶ模擬選挙に挑戦した。候補者のポスターや政党名のほか、小城市と同高についての公約を比較し、選択する上での優先順位を決めて自分の一票を託す相手を選んだ。
 生徒たちはまず、それぞれどの候補者のものかを伏せた状態で好きな政党名や公約を選択していった。次に、各候補者が政党名や掲げる公約を述べる映像(政見放送)を視聴して、最終的な投票先を考えた。
 公約はいずれの候補者も、小城市と小城高について1本ずつ掲げた。市に関しては、市内にカフェ併設の図書館を誘致する案や、企業の管理職や市議会に女性を増やす案などが並んだ。また学校に関しては、食堂の新設や、授業も休み時間も全て英語を使う「英語の日」を設けることなどが掲げられた。
 視聴では、教諭たちが行動力や情熱、知性をアピールするポスターや政見放送に、生徒たちから笑い声や悲鳴にも似た歓声が上がるなど盛り上がった。それが投票先を選ぶ段階になると一転、生徒たちは真剣に公約を比べていた。

 生徒たちが投票先を選んだ理由は、1本の公約だけだったり、2本の公約と候補者の人柄のいずれでも最良の選択をしたりとさまざまだった。中には「学校に関して、選んだ候補者とは別の公約に興味を引かれたが、公約の解釈の仕方を工夫して投票先を決めた」と頭をひねった生徒もいた。

 

【1年生】 選挙制度クイズで学ぶ 

 

 1年生約240人は、選挙権年齢の引き下げを含む選挙制度についてクイズ形式で理解を深めた。また成人年齢を20歳から18歳へ引き下げる法改正についても学び、「大人」や主権者に向けた心の準備につなげた。
 クイズの問題は「選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げた法律の名前は?」「得票数が同じ場合の当選人の決め方は?」など。1問目は正解の「公職選挙法」以外に「18歳選挙法」を選ぶ生徒も多く、「くじ引き」が正解の2問目では、多くが「同数の候補者で決選投票」を選んだ。生徒たちは相談しながら答えを決め、正解発表と共に歓声を上げていた。
 またこの出前授業の1週間前に成立した改正民法で成人年齢も引き下げられたことに関連し「18歳は大人と思うか?」という問いについてもそれぞれ考えた。多数となった否定派からは「学生だから」「飲酒や喫煙は二十歳からだから」という理由が挙がり、肯定派は「18歳でも仕事をしている人はいる」「交通機関の料金は大人」と指摘した。
 その上で「民法改正と共に10代の意見が政治に反映されるようになると思うか」という問いに対しては、「おじさんたちには届かない」という諦めの一方で、「10代がこれからの社会を担っていくのだから」と、政治参加への期待感をにじませた頼もしい声も聞かれた。

記者の目

 それぞれの授業の終わりに、中島佑子記者と多久島文樹NIE推進デスクが生徒たちにメッセージを送った。

中島「自分事として社会考えて」 

 司会も務めた中島記者は、選挙で若い世代ほど投票率が下がる傾向について指摘した上で、「候補者は支持してくれる人のために頑張るもの。投票へ行かないことには、10代の意見も政治に反映されない」と投票する意義について強調。投票先を決める上で必要な心構えについて「自分事として物事を捉え、社会について考えて」と訴えた。

多久島「知識得て、意見交わして」
 また講評で多久島デスクは、成人になることの意味から主権者としてのあり方につなげた。成人年齢の引き下げに触れ、「18歳になったからといって何かが変わるわけではない。大人になるためには『自覚する』、つまり『自分のことが分かる』ということ。自分の立場や役割が分かり、考えを明確にする必要がある」と指摘。政治や社会に関する考えを深めるこつとして「最初は稚拙でいいから、自分の意見をきちんと言えることが大切。そのために、新聞やテレビなど各メディアを使って知識を得るだけでなく、友達や親と意見を交わしていろいろな考えを取り入れて」と呼び掛けた。

生徒感想

 

1年・小島由莉子さん
 成人と子どもという垣根に対して意識が持てたと思う。大人か子どもかあまり考えなかったけれど今日を機に、家庭でも話し合ってみようと思った。選挙についていろいろ考えられてとてもうれしかった。

1年・中山恵介さん
 民法改正後、親の同意なくローンが組めるなどの内容を知ることができたので、しっかり理解して(知識を)生かしていきたい。18歳選挙権についてはテレビとかで見て、親と話していた。自分たちが社会を担うという意識や社会人としての自覚を持ちたい。

1年・南里かず美さん
 成人年齢の引き下げはやめた方がいいのではと最初は思ったが、選挙と併せて、若い人の意見が社会に反映されていくのならいいことかもしれない。きちんとした言動ができ、政治にも関心を持った大人になりたい。

1年・真島佑季さん
 成人年齢が20歳から18歳に引き下げになって、自分たちと一緒に2つ年下の人たちも成人することにびっくりした。2つ下の妹がいるので妹と一緒に成人すると考えると結構、複雑な気持ちになった。

1年・増野美優さん
 改めて18歳と20歳、大人と子どもについて考えさせられた。これからの時代は若者も参加して政治に関わるべきだと思う。18歳になったら自分の考えを持って投票しに行きたい。

3年・江里口知希さん
 選挙に対する関心が、より一層深まった。候補者を選ぶ時は何をもって選ぶのか分かった。私はもう18歳になって選挙権があるので、選挙公約や投票日をしっかり確認して投票に行きたい。

3年・佐藤凌真さん
 講演会などで主権者教育は受けてきたが実践的な授業は初めてで選挙を身近に感じるいい機会になった。自分の1票で地域の状況が変わるかもと思い、投票する時には公約を一番重視する。今後、ニュースを見て(社会や地域に)足りないところに気づき、自分の意見を持った大人になりたい。

3年・中溝あきねさん
 選挙をする時、どこを重視するのかという視点で見ることができていなかったので、新しく「こういうふうに見るのか、考えるのか」と思った。18歳になるという自覚を持つことが大切だと思った。

3年・林大貴さん
 投票先の選択は色々な観点で考えなければならず、難しかった。実際の選挙はもっと広い視野が必要で、さらに難しいだろう。家族と話したりして、自分の考えを持っておきたい。

3年・兵動孝子さん
 公約の中にも自分が実現してほしいものとそうでないものがあるので選ぶのがすごく難しかった。自分で情報収集をしなくてはいけないので、より新聞や県の報告に興味を持ちそうだ。

 

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