JR佐世保線(左奥)に並行して進む九州新幹線長崎ルートの建設工事=武雄市武雄町

Qもめる契機は

フリーゲージ頓挫発端

 フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発の遅れから、整備方式の見直し論議が進む九州新幹線長崎ルート。与党検討委員会は7月末までに結論を出す方針を示しているが、佐賀県と長崎県、JR九州の主張は異なり、着地点は見えない。見直しの経緯や浮上している整備方式、財源の仕組みなどの論点を整理する。

 長崎ルートは博多駅(福岡市)から長崎駅(長崎市)まで約143キロが走行区間になる。博多-新鳥栖駅(鳥栖市)間は開業中の鹿児島ルートを共用し、新鳥栖-武雄温泉駅(武雄市)間は在来線を活用する。武雄温泉-長崎間はフル規格の新線を建設している。

 新幹線と在来線はレール幅が異なるため、両方を走行できる新型車両のフリーゲージトレインを全国で初めて導入する計画になっていた。建設費の一部を負担する沿線の佐賀、長崎両県や営業主体のJR九州などの合意に基づいて整備を進めてきた。

 ところが、FGTの開発が難航して開発の見通しが立たず、昨年7月にはJR九州が安全性やコスト増など経済面の課題を挙げて「導入は困難」という見解を表明した。これを受けて、整備方針を決める与党検討委員会はFGTを事実上断念し、見直しの議論に着手した。

 全線フル規格化が有力な代替策として浮上し、長崎県やJR九州が整備を要望する一方、佐賀県は否定的な立場を堅持している。歳月をかけて折り合いを付けてきた三者の考えが分かれるようになった。

 

Q佐賀県なぜ難色

フル規格なら巨額の追加負担

 全線フル規格化は、在来線区間の新鳥栖-武雄温泉駅間を新幹線区間に変更し、高架などを新たに建設することになる。国土交通省が3月に公表した整備方式ごとの検討結果では、線路延長が約51キロで、費用は約6千億円だった。全ての整備区間が佐賀県内となるため、長崎県は負担が全くないのに対し、佐賀県は追加負担が1千億円を超える見込みになっている。

 佐賀県は開業した鹿児島ルートを参考に全線フル規格の年間負担額はピーク時に400億円(歳出予算ベース)になると試算した。県の予算で社会資本整備に充てる投資的経費は750億円前後で、試算を当てはめると5割以上を占める。

 道路橋りょう費の本年度当初予算額262億円を大きく上回り、道路の整備や補修などに要する年間の費用を全て新幹線に回しても足りない計算になる。財政規模に対する負担が大きすぎるため、全線フル規格化は「現実的ではない」とみている。

 財政面にとどまらず、ルートの選定に伴って停車駅などの見直しが生じる恐れや、在来線がJRから経営分離される可能性が出てくる「並行在来線」の問題なども懸念している。

【次の記事】

そこが知りたい新幹線長崎ルート(1)おさらい<下>

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