江戸時代後期に建てられた母屋。道路に面した側が店舗で、奥が住居になった当時の町屋建築の特徴が残る=小城市小城町の小柳酒造

母屋(手前)に隣接し、蔵や水槽、煙突などの酒造工程の一連の建物群が現存する小柳酒造=小城市小城町

 漆喰(しっくい)壁の母屋のたたずまいが、200年の歴史と風土を物語る。文化年間(1804~18年)頃の創業と伝えられる小城市小城町の小柳酒造。3000平方メートルの敷地内には、江戸時代に築かれた水路が流れ、中央には高さ16・5メートルのれんが造りの煙突が建つ。開発が進む市街地で町屋の風情を残す数少ない遺構。近年は世界的な日本酒ブームを追い風に、韓国や台湾をはじめ、オランダなど欧州からも観光客が訪れるという。

 母屋は道路に面して店舗、奥が住まい。往時の町屋の特徴を伝える。近代酒造業の景観を保っているとして登録有形文化財になったのは2002年。母屋や離れをはじめ、蔵や麹室(こうじむろ)など14棟が指定を受けた。

 時代の移り変わりとともに、かつて軒を並べた酒屋や鍛冶屋、しょうゆ屋は姿を消した。7代目社長の小栁平一郎さん(76)は「小城の良さ、歴史を後世につなぐ役割を強く再認識した」。文化財指定の意義をこう語る。

 現在、醸造は別の施設で行い、明治期建造の蔵で絵画や書などの展覧会、昭和初期に建った本蔵ではコンサートや落語会を開く。ここを拠点に新しいまちづくりグループもでき、まちの人材育成に取り組む市民グループの事務所として検査室1棟を開放している。

 小家は明治期、和紙問屋としても名をはせた。大正8(1919)年、62歳で死去した初代正兵衛の葬儀には多くの市民が参列。小城の産業を支えたとして町を見下ろす須賀神社のそばに記念碑も建てられた。

 老舗の酒蔵を守り、自らもまちづくりグループの一員として音楽会などを開いている小栁さん。それは、地域への感謝を示すためでもある。

 

小柳酒造アクセス

 住所は小城市小城町903。長崎自動車道小城スマートインターチェンジから国道203号方面へ県道を南下し、車で約3分。JR小城駅からは北に直進し、徒歩約20分。営業時間は午前8時~午後6時。第1、第3日曜は休み。電話0952(73)2003。

 

【ちょっと寄り道】須賀神社-「男はつらいよ」ロケ地

 小柳酒造から北に約500メートル。JR小城駅から真っすぐに延びる道路を進むと、153段の急な階段が続く須賀神社に着く。

 正和5(1316)年、この地に移り住んだ鎌倉幕府の東国御家人、千葉胤貞(たねさだ)が建立したと伝わる。かつては「祇園社」と呼ばれ、明治9(1876)年に今の名称になった。

 「祇園さん」として市民に親しまれ、本殿からは上(かみ)、中(なか)、下(しも)の3町に整然と分けられた町並みが一望できる。

 映画のロケ地にもなり、「男はつらいよ」42作目の「ぼくの伯父さん」や、市内の牛津高校が舞台の「ソフトボーイ」に登場した。今月22日には伝統行事の祇園祭が開かれ、3台の山笠が町を練り歩く。

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