カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案が衆院を通過し、論戦の舞台は参院に移った。ギャンブル依存症が深刻化すると野党は激しく抵抗したが、与党は数の力で押し切った。会期も延長し、今国会で成立させる構えだ。しかし政府が「世界最高水準」と胸を張るカジノ規制には疑問が噴き出し、国民の理解は得られていない。

 安倍晋三首相は「IRで地域が活性化され、日本全体の経済成長につながる」と力説する。自治体間の誘致合戦は熱を帯び、海外のカジノ事業者は1兆円以上の投資をぶち上げた。景気のいい話には事欠かないが、共同通信の世論調査では、ほぼ7割の人が「法案を今国会で成立させる必要はない」と答えている。

 依存症拡大の不安や経済効果への疑問などが背景にあるとみられる。ところがカジノ面積の規制は当初より基準が緩やかになり、場合によっては世界最大規模にすることさえ可能だ。客がカジノ事業者から賭け金を借りるという競馬や競輪などの公営ギャンブルで認められていない制度まで導入される。いずれも大きな論点になっている。

 そうした中で政府、与党は「万全の依存症対策を講じる」と言いながら、成立の二文字しか眼中にないように見える。国会での議論を軽んじてはならない。疑問や批判と向き合い、依存症対策を練り直す必要がある。

 カジノフロアの面積について、法案は国際会議場やホテルなども合わせたIRの延べ床面積の「3%以下」と規定。当初の政府案は「1万5千平方メートル以下かつ、IR全体の3%以下」だったが、与党協議を経て比率規制のみが残った。これによりIR全体を大きくすればカジノの面積は広がり、シンガポールやラスベガスをしのぐ世界最大規模にすることもできる。

 「面積に上限を設けると、観光先進国への目的達成を制約する」と政府は説明するが、依存症対策の観点からは甘すぎると言わざるを得ない。

 事業者の貸付制度は外国人観光客と、事業者に一定の預託金を納める日本人客が対象で、日本人客は「富裕層」に限られると政府は強調する。しかし富裕層も依存症と無縁ではなく、大王製紙元会長は子会社から不正に100億円以上を借り入れ、マカオのカジノにつぎ込んだ。借金がかさんでも黙認するような制度の是非については十分議論すべきだろう。

 カジノを賭博罪の例外として合法化する根拠にも批判がある。カジノは刑法で禁じられている賭博だが、依存症対策で社会還元することが求められるなど「公益性」が確保され、違法性は問われないと説明される。公営ギャンブルも同じ理屈で認められている。ただカジノを運営するのは公的な性格を持つ団体ではなく、民間の事業者だ。

 収益の30%が国や自治体に納められ、依存症対策や観光振興に充てられるとはいえ、稼ぐために客の獲得に躍起になるのは目に見えている。公益性と矛盾しないか慎重に見極める必要がある。

 法案は日本人客の入場を週3回、月10回までとするなど一定の制限を設けているが、実効性には疑問が投げ掛けられている。カジノ入場者の7、8割は日本人客という自治体や民間の予測もあり、依存症の影は大きくなりつつある。政府はそうした負の側面についても説明を尽くすべきだ。(共同通信・堤秀司)

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