映画監督の山田英治さん=佐賀市松原のシアター・シエマ

「ほたるの川のまもりびと」に出演した川原地区の住民たち(C)︎Better than today.

 長崎県と佐世保市によるダム建設予定地・川棚町川原(こうばる)地区(長崎)の人々の生活を撮影したドキュメンタリー「ほたるの川のまもりびと」が22日から佐賀市松原のシアター・シエマで上映される。長崎県佐世保市の水不足を背景に始まった石木ダム建設。「ただ普通の暮らしをしたい」―。映画監督の山田英治さん(49)は、川原地区で反対運動をする住民たちの穏やかな日常に迫り、ダムの必要性を問い直している。

 石木ダムは1975年に事業が開始した。川原地区での暮らしや家を守りたい地元住民とダム建設を推進する行政側の間で衝突している。地区を立ち退いていった住民もいて、現在は13世帯54人が暮らす。

 製作のきっかけになったのは3年前の春、知人から川棚町を案内されたことだった。川や棚田に囲まれた風景、川で泳ぐわんぱくな子どもたち。自然豊かな町にひかれた。そして、色あせた一枚の写真が山田さんを突き動かした。

 1982年にあった強制測量で、子どもたちが「帰れ!」と声高に叫んでいる。「子どもたちが反対運動で前面に出ていかないといけないのはなんだろうって。この不条理はほんと悔しいと思った」。止めどない涙があふれてきた。

 ただ、映画で描かれるのは淡々とした町の日常だ。てらてらと明かりがともる地区の祭り、キャッチボールをする父親と娘、建設予定地に構えた番小屋でおしゃべりするおばあちゃんたち。山田さんは「反対運動する人は過激な人。そんな先入観だった。反対運動を中心に描くんじゃなくて、自分がいいと思うものを描きたかった」という。

 山田さんは大手広告会社に勤め、CMプランナーとして企業の広告制作を担当していた。転機になったのは2011年の東日本大震災。それまでは、原発を推進する側としてCMを打っていた。「原発はエコだし、正義と思い込んでいた」。20年ほどやってきた商業広告の仕事を受けないと決め、現在は社会問題を中心にした制作に取り組む。

 反対運動を直接的に表現しないのは、戦略的な部分もある。「『反対』ってことから分断は生まれても、議論は生まれない。個人だけで表現した小さい世界じゃなく、『広告屋』としてより広く伝えていきたい」と語る。

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