協力しながら海底に竹を突き刺す漁業者=佐賀県沖の有明海

 佐賀県有明海漁協佐賀市支所が、漁場で藻場の造成を進めている。海底に約3000本のササ竹を立て、魚や貝が産卵をしやすい「海の森」をつくり出そうとしている。漁業不振に加え、国営諫早湾干拓事業の開門問題を巡る裁判が混迷を深める中、「宝の海」の再生に向け、漁業者自身でできることを探っている。

 梅雨の晴れ間の13日、佐賀市嘉瀬町の佐嘉漁港から南西に約15キロ離れた佐賀市支所の漁場に約30隻の船が集まった。ノリ漁師ら45人が、前日に積み込んだ長さ約3メートルの竹1千本を海底に突き立てる。さらに小舟に乗り換え、先端が二股に分かれた鉄の棒の先に、枝が付いた状態のササを挟んで突き刺した。「昔は海の中に魚や貝の隠れ家になるような凹凸があった。そんな漁場をつくりたい」。支所の運営委員長で漁師歴52年の杉町省次郎さん(69)は狙いをそう話す。

 二枚貝の生育に悪影響を及ぼす貧酸素を解消するため、潮の流れをかき回す目的で2015年から漁場に竹を毎年1千本ずつ立ててきた。今年は竹に加え3千本のササを使い、藻場づくりも始めた。漁協本所の補助を受けているが、費用を抑えるため、有志が3月からノリ漁の合間にササを切り出し、準備をしてきた。

 有明海では県の取り組みの効果もあり、アゲマキやウミタケなど一部で資源回復の兆しは見られるが、環境異変の原因は特定できていない。諫早湾干拓事業を巡る福岡高裁での和解協議は決裂し、7月30日に判決が言い渡される見通しで、再生への道筋は見えないままだ。「漁をなりわいにする者として、裁判とは別に、再生のための地道な取り組みをしなければいけない」と杉町さんは強調する。

 藻場造成の効果が表れるのは数年後。専門的な知見を持ち合わせているわけではなく、漁業者の長年の経験と勘が頼りだ。支所は県の事業に先駆けて漁場にしゅんせつ泥を積み上げ、ウミタケ復活に向けた手応えをつかんだ実績がある。

 「無駄なことだと笑われたっていい。これが失敗したらまた別のことをするだけ。何もしないのが一番いかん」と杉町さん。13日は周辺支所の漁業者も手伝った。再生への思いが行動となり、少しずつ広がっていくことを願っている。

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