部員に打撃のアドバイスをする唐津工の副島浩史副部長=同校

紅白戦で厳しい表情を見せる佐賀北の久保貴大監督=同校グラウンド

 5月下旬。NHK杯予選で敗れた佐賀北は早くも夏に向けた練習を始めていた。バックネット裏から選手の動きをじっと見つめるのは、2007年夏の甲子園で全国制覇したときの主戦久保貴大(29)。監督としてグラウンドに注ぐ視線は厳しかった。

 佐賀北は昨夏、これまでチームを率いた百﨑敏克監督(62)が勇退。後任に久保が就いた。チームは昨秋、今春と佐賀大会で8強入り。しかし、5月のNHK杯予選では佐賀市のライバルに及ばず、5年ぶりに本大会出場を逃した。「選手起用や采配もまだまだ。もっと全体を見ないと」。反省の弁が口を突いた。

 指導に迷うと高校時代に百﨑監督とやりとりした練習日誌を見返す。「監督が生徒のやる気を引き出すのがうまかったことに気付かされる」と久保。「まねするけど自分は口下手だし、簡単にはいかない」と試行錯誤の毎日だ。

 それでも、自身が佐賀北で学んだ「努力の大切さ」を伝えたいという思いは誰よりも強い。「野球だけではだめ。何に対しても努力できる人間になりなさい」。高校時代、百﨑監督から繰り返し言われた言葉は自らの人生の指針にもなっている。

 佐賀北日本一の打の立役者、副島浩史(29)は今春、唐津工に赴任した。96年に唐津工を初の甲子園に導いた青野雅信監督のもと、高校野球指導者としての第一歩。「忙しいけど毎日楽しい」と充実した日々だ。

 甲子園決勝の広陵(広島)戦で逆転満塁本塁打を放った副島は卒業後も福岡大で活躍。12年春、県内の銀行に就職したが、高校野球の指導者という夢を捨てきれず15年に体育教師になった。

 「とにかく野球を好きになってほしい。そうすれば自然と上達も早い」。生徒たちに高校時代の自分を重ねながら、真っすぐな「野球少年」を育てたいと考えている。

 全国優勝当時のメンバーでは、2人のほかにマネジャーだった真﨑貴史が昨秋から杵島商の監督に就任した。互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら「佐賀の高校野球を盛り上げよう」と声を掛け合っている。

 グラウンドで恩返しを-。あの夏に得たかけがえのない経験を次代につなげていく。

 

 ■メモ 第89回大会(2007年)の佐賀北は馬場将史、久保貴大の両投手を中心とした堅守を武器に甲子園で躍進。開幕試合から延長15回再試合を含む7試合73イニングを戦い抜き、佐賀県勢として94年の佐賀商以来13年ぶりとなる全国制覇を成し遂げた。96年松山商(愛媛)以来の公立校優勝は「がばい旋風」と呼ばれ、全国から注目を集めた。

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