佐賀市の残土置き場から山口県下関市の男女2人の遺体が見つかった事件で、殺人罪に問われた被告(68)の裁判員裁判が、4日から佐賀地裁で始まった。被告が黙秘を続け、犯行を直接証明する証拠がない中、「死刑求刑」の可能性もある検察側の主張がどう判断されるか注目される。 

 検察側の冒頭陳述によると、事件は2014年8月15日に起きた。土木建設会社社長だった被告は14年6月以降、男性から借金などの名目で計4千万円の返済を求められた。被告は事件3日前、油圧ショベルの先端を、爪が付いた「スケルトンバケット」に交換するよう従業員に指示。翌日、別の従業員に「お盆過ぎに取引先が廃棄物を持ってくる」として犯行現場となった縦横6~7メートル、深さ5~6メートルの穴を掘らせた。

 事件当日、2人が乗った軽乗用車が到着すると、被告は車から降りる間も与えずショベルのバケットを車の屋根に振り下ろし、さらにバケットと走行用ベルトで車を挟み込み、穴まで引きずって落とした。穴に土砂を掛け続け、車外に出た男性と、車内にいた女性を生き埋めにした-。検察は犯行状況を生々しく描いて示した。

 被告は公判冒頭の罪状認否で、捜査段階に続き黙秘を宣言した。検察側は防犯カメラや被告の自供など「犯行を直接証明する証拠はない」と認め、前後の状況から立証するとした。具体的には、車の損傷や現場が被告管理の土地だった点、穴掘りの指示理由や男性を呼び出した口実が虚偽とみられること、2人の死因は「医学的に窒息死と考えて矛盾はない」とする見解などを挙げた。

 一方、弁護側は被告には動機がないと主張し、犯行の計画性について「被告は重機を扱うことができ、1人で簡単に穴を掘ることができる。人を殺すための穴を他人に掘らせるだろうか」と疑問を呈した。2人の遺体は腐敗が進み、死因が不明な点にも触れ「曖昧で不確かな証拠で処罰されることは許されない」とくぎを刺した。

殺害場面陳述も 被告表情変えず

 男女2人を生き埋めにして殺害したとして殺人などの罪に問われた被告(68)の裁判員裁判の初公判。弁護側は全面的に争う姿勢を示し、法廷内は緊迫した空気に包まれた。被告は、終始落ち着き払った様子で陳述や証言に耳を傾けた。

 午前10時前。被告が入廷。黒のスーツ姿で、短髪に白髪が目立った。裁判長から名前や住所、職業などを問われると、よどみなく答えた。「黙秘します」。罪状認否では、ためらうことなく意思表示した。

 検察側の冒頭陳述の間、手元に置かれた資料に目を落とし、めがねをかけて時折、筆記具でメモしていた。殺害場面の陳述の間も表情を変えず聞いていた。

 「裁判員はそこに座っている被告を死刑にするかどうか判断することになります」。弁護側の冒頭陳述で、弁護士の言葉が響くと、6人の裁判員の表情に緊張の色が浮かんだ。

 傍聴した福岡市の50代女性は「裁判の期間が長く、気になって来た。真実をどうやって証明するのか見届けたい」と話した。

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