財務省が、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざんや交渉記録廃棄について、当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の主導で理財局や近畿財務局が行ったとする調査報告を公表した。

 麻生太郎財務相や官邸側が報道まで一連の行為を全く認識していなかったのかという疑念も残る中、関係幹部・職員計20人を処分、麻生氏も閣僚給与1年分を自主返納することでこの問題に区切りを付ける構えだ。

 しかし調査は、安倍晋三首相が夫妻の関与を全面否定した国会答弁を契機に交渉記録が廃棄されたと認定している。調査を前提にすれば安倍首相らへの「忖度(そんたく)」が要因だった可能性が高くなる。

 安倍首相は改ざん、廃棄に関して「行政への国民の信頼を損なう事態」と述べているが、政治の信頼の方が損なわれている。自らの言動を厳しく総括して責任を取らなければ信頼回復は難しい。

 改ざんは昨年2月26日、特例扱いの定期借地契約を申請する決裁文書から、昭恵夫人の名前などを削除したことが始まりだ。

 当時、国会で国有地の格安売却の不透明さが追及される中、理財局総務課長らが国会議員秘書らによる照会状況を記載した文書の取り扱いを佐川氏に相談。「外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきだ」という佐川氏の反応を総務課長らが書き直しと解釈、改ざんに至った。

 佐川氏はその後も自身の国会答弁を踏まえた内容に変えるよう念押しし、部下に「しっかり見るように」などと指示している。調査では、局長として改ざんの「方向性を決めた」と認定した。

 交渉記録を巡っては、安倍首相が昨年2月17日に「私や妻が関係していたなら首相も国会議員も辞める」と答弁したことをきっかけに、昭恵夫人の名前が入った交渉記録を確認した理財局総務課長らが他の議員秘書らによる照会記録とともに廃棄した。

 調査報告の中では佐川氏らの国会答弁と齟齬(そご)をなくして「国会質問を極力少なくする」ことがこれらの行為の目的とされているが、動機は何であれ行政や議会などの民主主義制度の根幹を支える公文書の信頼性を揺るがす愚行、蛮行であることに変わりはない。

 安倍首相は国会などで、自身の答弁は改ざんや廃棄とは無関係、官僚の忖度もなかったと否定しているが、「1強」状態が続く安倍政権の歩みを加味すればもはや説得力のない強弁にすぎない。

 2014年の内閣人事局発足に当たって、運用次第で官僚に忖度や萎縮が生じるとの強い懸念が与野党にあった。このような事態を招くことは十分、予見でき、安倍首相には回避する重い責任が課せられていたのだ。

 官邸と官僚との関係で言えば、13年の内閣法制局長人事が転換点になると指摘していた官僚も少なからずいる。安倍首相が集団的自衛権の限定的な行使容認に向けて、慣例を無視して同じ主張の外務官僚を起用したからだ。主張が首相と同じであれば出世し、違えば出世できない、と受け止められた。

 公文書を巡っては森友問題の他にも学校法人・加計(かけ)学園を巡る問題、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)など数え切れないほど不祥事が起きている。安倍首相は「内なる国難」を直視するべきである。(共同通信・柿崎明二)

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