佐賀県は、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の重大事故時の避難渋滞改善に向けた調査結果をまとめた。渋滞が予想される交差点を避けたり、交通誘導したりすることで、原発から半径5キロ圏内の住民全員(約8千人)が30キロ圏外に出るまでの時間が最大で14時間10分短縮された。ただ専門家からは条件設定の不十分さを指摘する声もあり、県では関係市町や県警と結果を共有し、避難計画に反映させるか検討する。

 事故発生で即時避難が必要な5キロ圏内の予防防護措置区域(PAZ)と、避難指示があるまで屋内退避することになっている5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の県民(計約17万9千人)が、自家用車(1台当たり2・5人乗車)で避難する条件で試算した。

 県消防防災課によると、PAZの避難では、唐津市の竹木場交差点と山本跨線橋(こせんきょう)交差点を避けるルートを設定し、両交差点での渋滞を緩和させる。玄海町牟田交差点など13カ所の信号機を制御し、唐津市の高野交差点などで交通誘導する。

 その結果、30キロ圏外までの避難時間は、昼間にUPZの全住民も避難指示前に自主避難したと想定した場合が15時間20分。改善策がない場合の29時間30分と比べ、14時間10分短縮した。

 UPZの避難では、唐津市街地と伊万里市街地、唐津市七山の滝川交差点を通らないよう回り道を設定。22カ所の信号を制御、3カ所で交通誘導をすることで、UPZ全住民の避難指示が出た時点から完了まで39時間かかるところが、18時間10分にまで短縮できると試算した。

 県消防防災課は「回り道や信号制御の効果が大きいことが分かった」と話す。

 県は2014年4月末に避難時間の推計結果を公表。PAZとUPZの住民約19万人が一斉に避難し、30キロ圏外に逃げるまで最長で30時間30分としていた。16年12月に国が了承した広域避難計画となる「玄海地域の緊急時対応」は、この推計結果を踏まえている。

 これに対し住民や関係自治体から改善を求める声が上がり、17年10月から今年3月にかけて改善策検討のための調査を実施した。事業費は2268万円。

 今回の調査結果に疑問を呈する専門家もいる。全国の原発避難計画をチェックし、新潟県の避難検証委員会委員を務める上岡直見氏(交通工学)は「前回と委託業者や条件設定が異なり、単純比較はできず、妥当性の評価が難しい」と指摘。スクリーニング(汚染者の被ばく検査)の条件設定もないとし、「スクリーニングも考慮すると交通誘導や回り道ができるのか」と、道路寸断などより厳しい条件下でのシミュレーションが必要との認識を示した。

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