レスリングの男子団体で、選手に指示を送る鹿島実業高の松尾秀二監督=鹿島市の同校

■入院半年 貫く「生涯現役」選手鼓舞

 佐賀県高校総体の会場に2日、ひときわ熱を帯びて選手たちを鼓舞する指揮官の姿があった。レスリング男子団体に出場した鹿島実業高の松尾秀二監督(50)。鳥栖工業高に敗れたが、「気合を十分に感じた」と選手たちをねぎらった。昨年12月にがんが見つかり半年間の入院を強いられ、部員たちが待つマットに戻ったのは総体の1週間前だった。

 あまりにも唐突な宣告だった。血便が出て痔(じ)だと思って病院に行くと、直腸がんが見つかり、肝臓にまで転移していた。医師には5年生存率20%と告げられた。

 「死ぬのか…」。大病を患ったことはなく、信じられなかった。2月に16時間に及ぶ手術でがんを切除。闘病を支えたのは「また生徒とレスリングがしたい」という強い思いだった。

 鹿島実業高出身。高校から競技を始め、日体大卒業後佐賀に戻って教員の道を歩み始めた。赴任した鳥栖工業高はレスリング部が廃部状態で、中学生に声を掛けるなどして部員を集めた。13年間の勤務で東京五輪候補の角雅人選手(自衛隊)らを育てた。2016年からは母校に勤めている。

 入院中は家族はもちろん、教え子たちの顔が頭に浮かんだ。抗がん剤治療を続け、退院したその足で学校へ。「手を抜くな。自分に負けるな」と選手たちにげきを飛ばし続けた。

 3年の谷口将樹主将(17)は「監督に勝利をプレゼントしたかった」と悔やんだが、「九州総体では監督のために絶対に勝つ」と力を込めた。

 松尾監督は「生涯現役」を掲げる。15年にギリシャ・アテネで開かれた世界ベテランズ選手権では、46~50歳のフリースタイル63キロ級に挑み、初出場で初優勝を飾っている。

 「人は目標があれば頑張れる。階級を一つ上げ、また世界大会で勝負したい」。生徒たちと歩み続ける。

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