妻の秀子さんが楽しみにしている重夫さんのサクランボが今年も赤く色付いた=伊万里市大川町相の谷地区

 伊万里市大川町の相(あい)の谷(たに)地区で、県内ではほとんど栽培されていないサクランボが鈴なりに実っている。福岡市西区の落合重夫さん(79)が定年退職後、妻の実家の畑を利用して育ててきた。重夫さんは赤く色付いた実を一粒一粒、ケアハウスで待つ妻を思いながら収穫している。

 

 サクランボ畑は相の谷地区の山深い場所にある。戦後食糧難の時代に開拓されて今は無人となった集落に、妻の秀子さん(76)の実家があった。福岡市の自宅と行き来しながら1人で140本を栽培している重夫さんは「昨年は病気で駄目だったけど、今年はたくさんなってくれた」と笑顔を見せた。

 重夫さんも大川町出身で、見合い結婚だった。電機メーカーに勤め、定年退職したら夫婦でサクランボを作ろうと準備を進めていた。ところが定年を間近に控え、秀子さんが脳内出血で倒れた。

 暖かい土地での栽培が難しいサクランボを素人1人でできるのか-。そんな弱気も頭をもたげたが、やるだけやってみた。全国の産地を訪ねて栽培方法を探り、いろんな品種を試した。花が咲き、実をならせるまで10年掛かり、毎年数十キロを収穫できるようになった。

 重夫さんは秀子さんの喜ぶ顔が見たくて、伊万里と福岡を行き来する生活を20年続けてきた。でも、今年でもう終わりだという。「75歳を過ぎて暑さがこたえるようになったし、よくつまずくんですよ」。5年前に施設に入所した秀子さんを、久しぶりに畑に連れてこようかと思っている。

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