佐賀新聞社の県内企業経営動向調査(2018年1~3月期)では、前年同期に比べて経常利益が「増加」した企業が「減少」を4期連続で上回った。人手不足が顕著な非製造業でやや足踏み感がみられたものの、製造業は堅調で、設備投資も意欲的だった。

 調査結果を見ると、500万円以上の設備投資を行った企業は前期比1・1ポイント増の49・0%。3期ぶりに増加に転じ、7期連続で40%を超える高水準だった。機械・金属、電気・電子、金融など製造業が積極的で、人工知能(AI)導入による生産改善も進んでいる。

 国内景気見通しでは、非製造業でやや後退したものの、「良くなる」が「悪くなる」を5期連続で上回り、先行きについても明るく見ている。

 課題となっているのが原材料の仕入れ価格。前年同期比で「上がった」と答えた企業が前期から微減の43・5%で、3期連続で40%台となった。一方で、製品価格が「上がった」は微増の14・3%にとどまる。国内消費が力強さに欠けるため、人件費や原材料のコスト増を価格に転嫁できないでいるようだ。

 労働力不足に関しては、酒造を除く全ての業種が経営上の問題点として挙げた。印刷、運輸、サービス・レジャーなど幅広い業種で働き手を確保するのが難しくなっている。

■売上高 製造、非製造やや後退

 前年同期比で「増えた」は前期比3・0ポイント減の36・0%、「減った」は3・0ポイント減の26・0%。いずれも2期ぶりに低下に転じた。製造業、非製造業ともやや後退したが、6期連続で「増加」が「減少」を上回った。

 製造業は「増加」が4・3ポイント減の38・6%となり、2期連続で低下した。3割台に落ち込むのは3期ぶり。「減少」は10・4ポイントの大幅減で18・2%。2年ぶりに1割台まで下がった。印刷の全社、医薬品の6割、機械・金属の5割が増収と答えた。電気・電子は6割が増収とする一方、3割が減収になるなど見方が分かれた。

 非製造業は「増加」が2・3ポイント減の33・9%。2期ぶりに低下したが、3期連続で3割台を維持した。「減少」は2期ぶりに上昇し、2・9ポイント増の32・2%だった。3割台となるのは1年1期ぶり。金融とサービス・レジャーの約6割が増収と答えた。建設関連が「増加」と「減少」がともに5割になり、明暗が分かれた。

 次期見通しは「増える」が27・3%、「減る」が23・2%となっている。

■経常利益 人件費増に苦しむ非製造

 前年同期比で「増えた」は前期比0・7ポイント減の34・3%で2期連続で低下した。「減った」は4・7ポイント減の26・3%となり、2期連続で低下した。20%台まで下がるのは3期ぶりとなる。「増加」が「減少」を4期連続で上回ったものの、人手不足に伴うコスト増が非製造業に重くのしかかっているようだ。

 製造業は、「増加」が2・8ポイント増の40・9%。4期連続で上昇し、4割台まで回復するのは1年1期ぶりとなる。「減少」は3期ぶりに低下し、15・2ポイント減の20・5%だった。電気・電子と医薬品の6割、食品の5割が増益と答えている。一方で、印刷の全社は減益だった。

 非製造業は、「増加」が3・7ポイント減の29・1%。2割台まで落ち込むのは2年1期ぶり。「減少」は3・3ポイント増の30・9%。3割台まで上昇するのは2期ぶり。「減少」が「増加」を上回ったのは、16年4~6月期以来1年3期ぶりとなる。卸売とサービス・レジャーの5割が増益とする一方、人員確保に苦しむ建設関連の6割、運輸と建設の5割が減益としている。

 次期見通しは、「増える」が25・5%、「減る」が24・5%となっている。

■自社の景況感 「良くなった」4期ぶり下降

 「良くなった」は前期比3・0ポイント減の30・0%。4期ぶりに下降した。「悪くなった」は3・0ポイント増え、18・0%だった。半数は「変わらない」と感じている。

 製造業は「良くなった」が1・6ポイント減の34・1%。「悪くなった」は3・6ポイント増え、25・0%。非製造業は「良くなった」が4・2ポイント低下し、26・8%。「悪くなった」は2・2ポイント増え、12・5%。医薬品では全社、電気・電子の半分で改善したが、機械・金属、建設などでは好転していない。酒造では「良くなった」が1社もなかった。

 前年同期比では「良くなった」が9・0ポイント減の23・0%、「悪くなった」が1・0ポイント減の24・0%。次期は「良くなる」が23・0%で、「悪くなる」の14・0%を上回っている。

■設備投資 7期連続で4割が実施

 500万円以上の設備投資を行った企業は前期比1・1ポイント増の49・0%。3期ぶりに増加に転じ、7期連続で40%を超える高水準を維持した。人手不足により、AIを導入して効率化を図るなど企業の積極的な姿勢がうかがえる。

 製造業の実施企業は6・8ポイント増の56・8%。2期ぶりに増え、機械・金属、電気・電子、食品製造、医薬品を中心に活発だ。酒造では未実施だった。

 非製造業は3・7ポイント減の42・6%。2期ぶりに減少したものの、金融で7割、サービスレジャーでは6割を超えた。建設や建設関連、大型店など6~8割が行わなかった。次期は56・1%が実施を計画。機械・金属、電気・電子、食品製造、医薬品で意欲的だ。

■操業度 高度操業状態続く

 現有人員で最大可能な操業度状態を100とした場合の平均は前期比2.4ポイント減の86.9%で、3期ぶりに下降した。100を越えた企業は1.3ポイント減の36.4%となり、2期連続で低下した。

 前期比で「上昇した」は5ポイント減の28.3%で、電気・電子で目立った。「変わらない」が56.5%で、前回調査で上昇したと回答していた機械・金属や食品製造が多く、人手不足などで高操業度状態が継続している。「低下した」は2.7ポイント増の15.2%だった。前年同月比では「上昇した」は0.9ポイント減の28.3%、「低下した」は3.7ポイント減の10.9%だった。

 次期は32.6%が「上昇する」と回答。「低下する」は21.7%となっている。

■経営上の問題点 「労働力不足」最多5割

 「労働力不足」が5期連続トップで、前期比5.6ポイント減の49.5%だった。製造業の42.9%、非製造業の54.5%が経営課題に挙げた。業種別では、運輸とサービス・レジャーが8割、食品製造と建設が6割を超えた。

 2番目に多かったのが、「設備の老朽化」で前期比5.5ポイント増の37.1%だった。酒造や陶磁器製造では7割が課題に挙げた。

 「販売・受注競争の激化」と「従業員教育」が29.9%で3位だった。大型店の約6割がデフレによる低価格競争などを理由に販売・受注競争の激化と回答。従業員教育は建設業の約8割が問題と捉えている。

■仕入れ価格 「下がった」5期ぶり増

 前年同期比で「上がった」は5.4ポイント減の43.5%で3期ぶりに減少し、「下がった」は3.2ポイント増の5.4%で5期ぶりに増加した。ただ、「上がった」は3期連続4割台で、仕入れ値が高止まりしているようだ。

 業種別では機械・金属の約6割、運輸の約6割が「上がった」と回答した。食品製造は、「上がった」が約3割、「下がった」は約2割で、同じ業種の中でばらつきがあるケースも見られた。

 次期は34.8%が「上がる」と回答。「下がる」は4.3%にとどまっている。

■資金繰り 「変わらない」最多85%

 前期比で「楽になった」は1.3ポイント減の7.2%で、2期ぶりに下降した。「苦しくなった」は0.2ポイント減の7.2%で2期連続で減少した。「変わらない」が1.5ポイント増の85.6%だった。

 製造業は「楽になった」が2.8ポイント減の7.0%、「苦しくなった」は0.6ポイント減の11.6%。

 非製造業は「楽になった」が0.1ポイント減の7.4%、「苦しくなった」は0.1ポイント減の3.7%だった。

 次期は、6.2%が「楽になる」、同じく6.2%が「苦しくなる」とみている。

■製品価格 「上がった」2期ぶり増

 前期比で「上がった」は1.1ポイント増の14.3%で、2期ぶりに増加した。「下がった」は2.2ポイント減の5.5%。「変わらない」が8割を占め、販売価格への転嫁が進んでいない現状がうかがえる。

 製造業は「上がった」が2.0ポイント増の9.3%、「下がった」は2.6ポイント減の4.7%。非製造業は「上がった」が0.8ポイント増の18.8%。「下がった」は1.7ポイント減の6.3%だった。業種別では、卸売業の約3割、食品製造の約2割が「上がった」と回答した。

 次期は15.4%が「上がる」と回答。「下がる」は4.4%となっている。

■国内景気見通し 先行きに明るさも

 次期見通しは「良くなる」が前期比13.0ポイント減の19.0%、「悪くなる」が4.0ポイント増の8.0%。4期ぶりに「良くなる」が減少したものの、5期連続で「良くなる」が「悪くなる」を上回っており、先行きに明るさを感じている企業が多い。

 製造業は「良くなる」が5.7ポイント減り、20.5%。「悪くなる」は2.8ポイント増の6.8%。非製造業は「良くなる」が18.3ポイント減の17.9%、「悪くなる」は3.7ポイント増の8.9%だった。次々期(7~9月)は17.0%が「良くなる」と回答。「悪くなる」を9.0ポイント上回るものの、64.0%は「変わらない」と見ている。

【調査結果を見て】             

■経済活性化へ変革を 佐賀銀行頭取・坂井秀明氏

 県内経済は、個人消費において飲食料品が堅調さを増し、家電を中心とした耐久財の販売や外国人観光客の増加が続き全体として緩やかに回復している。

 今回の調査結果から、「売上高」「経常利益」は、対前年同期比で「増加」したとの回答が減少し、企業の景況感に一部慎重な見方があるものの、回復基調は継続しているとみられる。また、雇用情勢は改善され、有効求人倍率も高水準を維持している中、人手不足感は強く、働き方改革、生産設備の自動化や省力化がさらに進んでいくとみられる。

 先行きについては、海外経済や金融市場の変動に留意する必要があるが、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの技術も取り入れることでさらに地域資源や魅力が活かされ、経済が活性化していくことを期待したい。

■仕入れ価格上昇留意 佐賀共栄銀行頭取・二宮洋二氏

 県内経済は、企業の生産活動において国内・海外の受注増加に伴う製造業の高操業が続いている。個人消費は暖房器具などの季節商品が好調であったことや、平成29年度の九州佐賀国際空港の利用者数が過去最高を更新するなど外国人観光客の増加による影響で回復傾向にある。今回の調査結果を見ると、製造業で売上高・経常利益は増加したとの回答が約4割を占めている。また景気天気図を見ても機械・金属、電気・電子は好調とある。

 一方で、原材料・製品の仕入れ価格が上昇したとの回答が4割超を占めているのに対し製品価格は変わらないとの回答が8割を占めており、今後の企業収益への影響に留意が必要である。各企業においては、競争力のある製品開発や生産性向上に資する取り組みを期待したい。

■人材の高度化目指す 県経営者協会専務理事・福母祐二氏

 我が国経済は、1~3月期は天候不順の影響があったものの、米国、新興国の安定成長、インバウンドの増加、オリンピックに向けた需要を見越し、国内の設備投資も積極的な動きを見せるなど、緩やかながら拡大基調にある。

 県内は有田陶器市などに加え、見学者の評価の高い肥前さが幕末維新博のイベントが活況を呈す中、比較的安定的に推移している。こうした中、県内の賃金交渉は前年と同水準にあるが、本協会の調査では、7割超の企業が人材の確保・定着につながる働き方の見直しに取り組んでいる。今回調査も前回同様、価格転嫁が課題として残るものの、設備投資も底堅い動きを示している。

 今後も人工知能の活用を含め業務の見直しと人材の高度化を図り、効率的な企業運営を目指したい。

■消費の押し上げ期待 佐賀財務事務所長・樋口光雄氏

 本年1~3月期の実質GDP成長率はマイナス0・2%となり、9四半期ぶりにマイナス成長になった。内閣府からは、野菜価格の上昇といった一時的な要因もあり、個人消費が減速したことなどからマイナス成長になったと聞いている。

 今回の調査結果を見ると、前回に続き、売上高及び経常利益とも増加が減少を上回っており、設備投資も底堅さが見られる。また、主要業界の景気天気図も「好調」や「やや明るい」業界が多く、県内景気は回復基調が続いていることがうかがえる。他方、経営上の問題点としては「労働力不足」や「設備の老朽化」が上位となっており、省力化投資や設備の更新投資などを通じた生産性向上の動きを確認していきたい。

 原油高など海外リスクに注視する必要はあるが、賃金引き上げの流れは続いており、今後の消費を押し上げていくことが期待される。

■観光面で維新博注目 日本銀行佐賀事務所長・増渕治秀氏

 県内景気は、緩やかに回復している。今回の調査結果を見ると、1~3月期は前回調査での見通しに比べ、売上高、経常利益ともに前年比で増加したとの回答が上振れたほか、設備投資も計画を上回って実施された。

 4~6月期も、売上高・経常利益について前年比で増加または前年並みの予想が7割を超えるほか、設備投資も6割近くで計画されるなど、所得から支出への前向きな循環メカニズムが働いているものとみられる。こうした中、「販売・受注競争の激化」を経営上の課題として指摘する企業が目立った。1年前に比べ、原材料・製品の仕入れ価格が上昇したとみる企業は4割を上回っており、収益面への影響には留意する必要がある。

 今後は、労働需給が改善するもとで所得環境の持ち直しが個人消費のさらなる回復につながることが期待される。また、“肥前さが幕末維新博覧会”による観光面への好影響にも注目したい。

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