『国家の品格』の数学者藤原正彦さんの父親は、直木賞作家で気象学者でもあった新田次郎。母親は藤原てい。この藤原家の家族がとても大切にした価値観は「卑怯(ひきょう)を憎む」だったそうだ◆藤原さんが子どものころ、父親は「弱い者がいじめられていたら身を挺(てい)して助けろ。見て見ぬふりは卑怯だ」「大勢で一人をやっつけるのはこの上ない卑怯者だ」「うそをつくのは卑怯」と、子を導いた。母親も言葉を変えて、恥ずべき「卑怯なこと」を教えた◆日大アメフット部の危険なタックル問題。「意図的な指示はない」と、この期に及んでも言い逃れようとする前監督、コーチ、そして当事者能力があるとはとても思えない大学当局…。唾棄すべき卑怯者たちの姿を見る思いである◆渋々開いた無様(ぶざま)な記者会見は恥の上塗りとなった。二十にして辛い十字架を背負った当該選手が「(反則は)自分の弱さがさせた」と、ぎりぎり指導者をかばい、言葉を震わせた。そんな痛ましい姿を見ても彼らは何ら心動かすことなく「乖離」と「誤解」の二言を繰り返す◆果たしてこれが“学問の府”で起きたことなのか。暗然となった人も多いだろう。来月に迫るアメフット世界大学選手権の代表を辞退させるなど、将来ある若者を追い詰めて何ら恥じない。心根の卑しさ、残酷さ、その罪は万死に値しよう。(賢)

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