国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る訴訟の和解協議で、開門を求める漁業者の弁護団は23日、開門しないことを前提に国が示す漁業振興の基金案の実現などを求める福岡高裁の2回目の和解勧告を拒否したことを明らかにした。「開門しなければ有明海の環境変化の原因究明や再生につながらない」と訴えている。

 高裁は22日、佐賀など3県の漁業団体が基金案や潮受け堤防内の調整池の排水対策などを要望したのを踏まえ、弁護団と国に新たに勧告を示した。弁護団は「国が開門しない代わりに14年間続けてきた有明海再生事業は成果が表れていない」として勧告を疑問視、28日の和解協議の欠席を高裁に伝えたという。馬奈木昭雄弁護団長は「勧告は開門問題の経緯に無理解なことを明らかにする恥ずべき文書だ。真剣に検討するのに値しない」と非難した。

 農林水産省は「真摯(しんし)に受け止め、対応を検討する」とコメント、横井績農地資源課長は「漁業団体の要望が反映されており、和解協議が進むとすれば当然議論されるべき内容だ」と冷静に受け止めた。

 勧告は、漁業団体や沿岸各県について「開門を巡る一連の裁判で重大な利害関係を持ち、重要な役割を担っている」と明示した。佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長は「要望の前向きな検討を求めている」と一定評価しつつ、「あくまで和解が前提であり、弁護団は協議に応じないと言っている」と実現には否定的だ。

 佐賀県の山口祥義知事は「漁協に寄り添ってやっていく。目的はとにかく有明海再生であり、(漁業団体の要望は)実施してもらいたい」と話した。

 訴訟は、開門を命じた福岡高裁確定判決を履行しない国が勝訴原告に対する制裁金(間接強制金)の支払いを強制しないよう求めていて、和解協議が決裂した場合は7月30日に判決が出る。国が支払った制裁金はこれまで11億4840万円に上る。 

福岡高裁の和解勧告(骨子)

 開門しないことを前提として

 1 国において提案する基金を実現すること

 2 国において、有明海の環境変化の原因究明に関する調査を行い、有明海の再生に向けた取り組みを継続すること

 3 3県の漁業団体が要望する(1)有明海再生事業の継続(2)調整池からのこまめな排水の確実な実施とマニュアル化(3)基金と別枠で調整池に排水ポンプを増設することについて、国において前向きに検討すること

 4 これまでに支払われた間接強制金について調整を図ること

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