■「言葉の力」新聞で養う

 新聞は日本や世界の出来事や地域の細やかな情報を毎日届けてくれる。だが、それだけではない。私にとっての新聞は「言葉の力」を養うことができるテキストでもある。新しい言葉や難しい言葉の意味を知ったり、情感あふれる言葉や遊び心のある言葉に触れたりした時の「知的快感」は何物にも代えがたい。
 『思考の整理学』など多数の著書があるエッセイストの外山滋比古氏は言う。「歳を取ると、新しい知識を取り入れて更新していかないと知的な老化が早く進む。それを防ぐための最も優れたテキストは新聞である」と。93歳の今も精力的に執筆・講演活動を続けている氏の言葉には説得力がある。
 中学生のプロ棋士・藤井聡太六段は、新聞好きで知られている。新聞との出合いは小学校低学年の頃だという。「新聞でいろいろなニュースに触れることで視野が広がり、漢字や読解力も身に付いた」と話す。対局後の記者会見で「望(ぼう)外(がい)の結果」「僥(ぎょう)倖(こう)としか言いようがない」など、難しい言葉がすらすら出るのも新聞を読んできたからか。
 ひろば欄に嬉野市の宮崎憲太郎様の「おとしめられる重い言葉たち」(6日)が掲載された。私も全く同感。「真(しん)摯(し)」「謙虚」「丁寧」「厳粛」「真剣」「誠実」「遺憾」。これらの言葉は、安倍首相をはじめ国会議員がよく使う。本来の意味は重くて凛とした言葉であるが、国会での議論を聞いていると、その場しのぎの軽い言葉になっているように思う。
 言葉は時に、相手を傷つけたり勇気づけたりもする。兵庫・西宮市長が記者に「殺すぞ」と発言。過去にも問題発言をしてきた市長の姿勢への批判が噴出し、市長はついに辞職願を提出した(20日)。小平奈緒選手がスランプに陥った時、コーチに『顔晴(がんばれ)』という言葉をもらった。「本当のガンバレは顔が晴れたこと。辛(つら)くても笑顔を忘れちゃいけない」。小平選手はこの言葉をきっかけにスランプを脱して、全日本ジュニア選手権で優勝することができた(19日)。
 聞いたこともない言葉を知った。東京・銀座にある公立小学校が高級ブランド「アルマーニ」がデザインした制服を採用することを決めた(9日)。一揃(そろ)いで8万円以上も。校長は採用した理由を、「銀座の学校として発展していくために、ブランドの力を借りるため」と言い、「服育」という重要な教育だと強調した。「食育」「眠育」は聞くが、「服育」とは初耳だ。
 子どもはすぐに大きくなるので1着では済むまい。休み時間に外で遊ぶ時に、高額の服では泥んこにもなれまい。校長はなぜ保護者や職員、教育委員会などに相談しなかったのか。アルマーニだけが制服ではアルマイニ!? 
 卒業する高校生を紹介する企画「巣立つ」。毎回楽しみに読んだ。「デスクノート・96文字のエール」(11日)を読んで、文字数が96文字と厳格に決められていることを知った。取材を受ける高校生の誇らしい気持ちと記者たちの、限られた文字数の中に、あれもこれもたくさん載せたいという思いが伝わってきた。
 平昌(ピョンチャン)冬季五輪では、日本選手が大活躍。大会前の負傷、過去の失敗や屈辱、全てを糧にした選手の活躍に胸が熱くなった。「全て報われた」「右足に感謝」「このチームでやってきたことが間違いではなかった」。選手の言葉はどれも重く、輝いていた。「お先どうぞ ゆづる心に 金メダル」「安全運転 大事だよね そだね~」。こんな交通標語を作った熊本県警にも金メダルをあげたい(28日)。
 冬季五輪の最(さ)中(なか)に飛び込んだうれしいニュース。将棋史上初の永生七冠を達成した羽生善治氏と、囲碁で初めて2度の全七冠独占を果たした井山裕太氏に国民栄誉賞が授与された(14日)。「自分の限界に挑戦していきたい」「棋士としても人間としても努力していきたい」。二人の言葉に、「両雄あくなき探究心」の見出しが躍っていた。
 それにしても、「羽生」と書いて「はぶ」と読んだり「はにゅう」と読んだり。日本語って難しいけど面白い。(そだね~)
 新聞は毎日さまざまな「言葉」を届けてくれる。これからも知的快感を味わえる言葉に数多く出合い、知的老化を予防したい。=2月分(なかしま・やすゆき、唐津市)

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