9寸柱(手前)が家屋を支える深川家住宅=小城市小城町

 「ここの一番の見どころは、この九寸柱でしょう」

 小城市小城町の「深川家」第27代当主・深川純治さん(72)=北九州市在住=は、土間と居間を区切る約30センチ幅の角柱に「喝」を入れるかのように手のひらでたたいた。

 約10年前、邸宅や蔵などの改修工事に入った宮大工は九寸柱を見て、「民家でこんな幅のある柱は見たことがない。この柱が残っていること自体、この家の興隆を伝える生き証人」と驚いた様子だったという。

 2001年4月、国登録有形文化財となった深川家住宅は、幕末・維新期にさしかかった小城鍋島藩の治政下に建てられた。当時、造り酒屋を営んでいたため、東西に延びる切り妻造りの屋敷は、麹(こうじ)菌を守るため外観は真壁で囲い二階両端の戸袋を白漆喰(しっくい)で塗り込んでいる。

裏庭から見た深川家住宅。裏庭は緑豊に草花が生い茂り、青空の下でカフェも楽しめる=小城市小城町

 純治さんはこの邸宅で生まれたものの、父の栄治さん=2003年4月死去=が銀行員だったため転勤が多く、年間を通して住んだのは高校時代の2年間だけ。それでも、正月とお盆に訪れた際、表通りの格子戸を開くと、吸い込まれるように屋敷の奥へと光が差すのを見て「歴史が詰まった空間」と幼心に刻んだ。

 父・栄治さんは「飛躍を求め全国へ散っていた深川家の関係者がいつでも帰れるよう、この住宅を残してくれ」と言い残して逝った。当時、北九州市でシステムエンジニアの会社を経営していた深川さんは、邸宅への思いは薄かった。遺品整理を進めると、漆塗りの調度品をはじめ、書聖が揮毫(きごう)した書画や、「藩主や貴族が訪れた」と記された代々当主の日記が見つかり、歴史の重みを再確認する。

 現在、週末3日間、カフェスペースとして邸宅を開放。古民家の和のテイストを生かし、落語家を招いて寄席を開いたり、ジャズのセッションを開いたりするなど市外からの来場者が増えてきた。「民泊も考えている。いろんな国の人とつながりを持ちたい」と、純治さんの思いは世界を向いている。

 

■アクセス

 

 住所は小城市小城町上町877。長崎自動車道の小城スマートICから国道203号に向け県道を南下し車で約7分。JR唐津線では小城駅より北へ直進し徒歩20分。開館は毎週金、土、日曜午前11時~午後4時。希望日があれば相談に応じる。電話0952(73)1166。

 

 

ちょっと寄り道 羊羹資料館-製法や歴史学べる

 深川家住宅から西へ歩いて3分ほどの場所に、国登録文化財の「羊羹資料館」がある。小城羊羹の老舗・村岡総本舗の砂糖蔵として1941年に建築。れんが積みの洋風で、「佐賀の小京都」と称される小城町でシンボリックな建物として市民に親しまれた。湿気から守るため床は40センチほど高く、れんが造りの外壁は当時貴重品だった砂糖を守るための防火の意味があった。

 84年に改修し、2階建ての羊羹資料館として生まれ変わった。1階の休憩室では、羊羹と抹茶を味わえる。2階には寒天や天草、小豆など羊羹づくりに必要な原材料のほか、時代によって変遷する包装やラベルを展示し、唐津線の車内販売に使った木箱なども並べている。このほか製法や歴史についてビデオやパネルで紹介している。

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