年齢を問わず受刑者を収容している佐賀少年刑務所=佐賀市新生町

 佐賀県佐賀市にある佐賀少年刑務所で今年2月、持病があった80代男性受刑者がけいれんを起こし、搬送先の病院で亡くなった。記事を読んだ読者からは「なぜ少年刑務所に高齢者が収容されているのか」との声が本社に寄せられた。佐賀少年刑務所を訪ねると、名称の印象とは異なり、高齢受刑者が少なくない現状が見えてきた。

 並んだ長机の上で、菓子用の箱やノリ養殖に使う小袋が出来上がっていく。刑務作業の中では力がいらない単純作業の一つ。佐賀少年刑務所内にある作業場の一角で、自分のペースで組み立てていく高齢受刑者らの姿がある。「私たちは慣れていますが、一般の方には珍しい光景かもしれません」。案内を務めた男性刑務官はそう話した。

 少年刑務所は、佐賀を含め全国6カ所にあり、刑務所や拘置所と並び、法務省所管の刑事施設に位置付けられている。佐賀少年刑務所の担当者は「成人に加え、少年も収容することができる刑務所」と説明する。主に九州管内から、初犯など「犯罪傾向が進んでいない」と分類された20歳未満の少年や成人を受け入れている。

収容増背景に年齢枠撤廃

 佐賀少年刑務所はもともと、収容対象を少年と26歳未満に限っていた。20年近く前、刑務所などの収容者数が定員を上回る「過剰収容」問題が表面化。経済状況の悪化や凶悪犯罪の増加などで、全国で施設が手狭になっていた。こうした背景からか、佐賀少年刑務所は1999年10月から30歳未満にまで対象を拡大し、さらに2000年4月から年齢の上限を撤廃した。

 同刑務所によると、受刑者の定員は578人で、17年の1日平均収容人員は358人で減少傾向が続いている。昨年1月1日現在、60歳以上の受刑者は29人だった一方、20未満の少年受刑者は1人のみ。罪を犯した少年の多くは保護処分などになり、少年刑務所に収容されるのは殺人など重大犯罪に関わったケースに限られる側面がある。

 法務省矯正局によると、高齢受刑者の比率は全国的に上昇傾向にある。60歳以上の受刑者は07年に9383人で全体の13・4%、16年は9308人で19・0%に上る。佐賀は11年~17年は7~10%台を行き来し、顕著な高齢化は見られないが、平均年齢は34・8歳(11年)から36・7歳(17年)になっている。

 高齢化に伴う課題も予想される。佐賀少年刑務所では、受刑者が1日8時間ほど従事する刑務作業には精密な木箱作りや墓石製作があるが、高齢者でもできる単純作業は限られる。刑務官は「高齢受刑者には簡単な作業を充てているが、単純作業の仕事ばかりを企業からいただけるわけでもない」と話す。

 社会復帰支援を担当する刑務官は「障害のある高齢者や身寄りのない高齢者に対し、社会の受け皿を確保することも今後の課題になる」。本年度は自治体の福祉担当者を招き、受刑者に出所後の相談窓口の存在を知らせる考えだ。

 普段の服役生活でも高齢受刑者には一段と配慮し、夏場は熱中症対策で保冷剤を配り、冬場は毛布を一枚多く貸しているという。若い受刑者を介助係に指定し、歩くのが困難な高齢受刑者に付き添っている。再犯防止や福祉の充実に向け、現場の模索は続いている。

<記者の目>現状と課題、社会で共有を

 裁判取材で刑事事件の被告の姿はよく見るが、刑務所内の姿は初めてだった。刑務作業には、受刑者のうち高齢者が半数近くを占めるものもあり、少なくない高齢者が罪を犯している事実が実感に変わった。

 佐賀少年刑務所には医師や薬剤師、准看護師が配置されているという。2月に亡くなった80代受刑者は入所時から持病の投薬治療を受け、心臓発作時に服用する薬の処方も受けていた。受刑者が外部の病院に入院する際は、職員が複数人同行する必要があることも取材で初めて知った。

 高齢化に伴い、こうした対応の機会が多くなれば、職員の負担が増えるなど新たな課題も生じるだろう。刑務所の現状は社会の映し鏡ともいえる。そう考えると広く社会で共有することの意味を、法務省も、そして私たちもしっかり認識する必要がある。

このエントリーをはてなブックマークに追加