天山(奥)を望む山あいで、4年前からミカン園を経営する森正行さん=多久市南多久町長尾

 多久市南多久町長尾地区でミカン園「風ふう」を営む森正行さん(66)=同町下多久=が、「家族や子どもたちが自然と触れ合える場所に」と農園の一部を無料で開放している。極早生(ごくわせ)のミカンを無料で収穫できるほか、近隣住民の協力を受けてタケノコ掘りやそば作り体験などを企画し、不登校の子どもとその父母らの交流の場にもなっている。

 農園は天山(標高1046メートル)を正面に望む中山間地にある。小学校教師だった森さんが退職後、高齢のため廃園を考えていた小栁豪(たけし)さん(84)から約50アールを購入した。

 ミカンの木約350本のうち100本は、年会費千円で1本を所有するオーナー制を導入。自分で毎年約30キロを収穫できる。これまでに不登校の子どもがいる家族が「山里で伸び伸びと過ごしたい」と利用した。進学や就職などで別々に暮らす家族が収穫期(10月下旬)に再会できるとして毎年、継続して申し込むケースもあるという。

 より多くの人たちが交流できるように、残りのミカンの木は無料開放している。コンクリートで一部舗装し、地元の保育園児や老人ホームの入所者らが毎年収穫に訪れている。

 森さんは教師だった頃、悩みを抱え、学校に行けなくなった児童を目の当たりにした。子どもたちが自然の中で自分と向き合う場をつくろうと、県内の陶芸家などの協力を受けて約20年間、ものづくりの体験工房を市内の山あいで運営してきた。

 現在は小栁さんから栽培法を学びながら、周辺の耕作放棄地にサクランボやリンゴ、ソバなども植えた。収入はオーナーの年会費だけで、利益はほとんどないが、森さんは農園を「山の学校」と例え、「人を引きつける自然の力を、一人でも多くの人に感じてもらえたらうれしい」と話す。

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