撤去作業が進む古沢岩美さんのアトリエ。三女大谷形子さんが遺品を整理している=東京板橋区前野町

文化面・古沢岩美さん個展・ニコンデジカメ・990607・東京・高井

撤去作業が進む古沢岩美さんのアトリエの外観=東京板橋区前野町

 鳥栖市出身で日本のシュールレアリスム絵画の草分けとして知られる洋画家古沢岩美さん(1912~2000年)のアトリエ(東京板橋区前野町)が取り壊される。3月下旬には有志によるお別れ会も開かれた。遺品を整理した三女の大谷形子さん(68)は「父のルーツの場所がなくなるのは残念」と語る。

 

 古沢さんは16歳で上京、佐賀市出身の洋画家岡田三郎助に師事した。その後、ダリなどの影響を受け、荒野で頭骨や腸を絡みつかせた「地表の生理」や、オオカミの顔と人間の女性の体を持つ「プルトの娘」など衝撃的な傑作を次々と発表した。

 戦後に構えたアトリエは町工場群や住宅が並ぶ一画にある。300坪の古びた屋敷には西洋風の大きな庭があり、突き当たりがアトリエになっている。天井の高さが5メートルあり、絵の具が乗ったパレットやきれいに整えられた絵筆がそのまま残っている。

 「父は何にでも興味を持ち、とことん勉強する人でした」と形子さん。絵の参考にしたと思われる東南アジアの民芸品や世界各国の楽器、彫刻、外国の書籍などが所狭しと置かれている。古沢さんの絵は、多くの作家も魅了した。井上光晴や瀬戸内寂聴はここまで作品を買い求めに来た。開高健は古沢さんの内面がにじみ出たようなこのアトリエを「難破船」と評した。

 古沢さんの妻が05年に死去後、維持管理してきた長女も14年に亡くなり、建物の保存が難しくなった。残っていた作品や手紙は、古沢さんの企画展を開いてきた板橋区立美術館に寄贈した。建物は取り壊し、分譲住宅地になる。

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