会見で基金案の経緯などを説明する横井績農地資源課長=4月10日、福岡市

会見で、和解協議に応じない理由などを説明する馬奈木昭雄弁護団長=4月9日、福岡市

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門問題で、国が開門しない方針を明確にして25日で1年になる。開門に代わる解決策として福岡高裁の和解協議で示している100億円の漁業振興の基金案は、開門を求める漁業者側弁護団の反発で議論が緒に就かない状況が続く。弁護団と農林水産省が会見で示した基金案や和解協議に対する考え方をまとめた。

 

■馬奈木昭雄氏・開門派弁護団長 訴訟と切り離し実行を

 長崎地裁の和解協議で2016年に基金案が提案された当初、漁業団体は反対した。福岡高裁で示された今回の基金案は、何も変わっていないのに、今は賛成しないわれわれがおかしいという話になっている。基金案をのめば、有明海の再生を諦めることになってしまう。漁業者の利益になるはずがなく、再生を投げ捨てるつもりはない。

 和解協議にわれわれが参加することは、「基金案をのむ」「開門は求めない」という意味しか持たない。基金案が有明海再生に有益であるなら、「開門を諦めるのと引き換え」という条件を付ける必要がどこにあるのか。国が基金を訴訟と切り離してつくれば済む話で、漁業団体もその実現を求めるべきだ。国は(弁護団が)開門を断念しないと基金案は実行しないと言い、裁判所もそれを支持するのはおかしい。

 問題を解決する現実的方法は、開門を含めて当事者が主張していることを全て議論すること。われわれも和解協議を望んでいるが、裁判所が拒んでいる。当方の案を議論に加えてほしいと言っているだけなのに、どうして裁判所が否定し続けるのか。確定判決を投げ捨てないと議論は進まないと言っているのと同じだ。

 われわれはこれまで協議を拒否したことはない。基金案についても長崎地裁で1年間にわたる議論に誠実に応対してきた。もう議論は済み、実現せずに流れている。和解協議であらゆる論点を議論し、あるべき姿をはっきりさせていくのが裁判所の本来の姿勢だ。

 

■横井績氏・農水省農地資源課長 和解なしに実現しない

 福岡高裁の和解協議は、訴訟が既に結審をして、判決日を決めた上で行う状況にある。これまでの裁判の積み重ねも踏まえ、(開門しない前提の)一つの方向性を持って和解へ向かおうとするのが今回の和解勧告であり、重く受け止めるべきだ。「(開門)する、しない」という先祖返りした議論をいつまでするのか。福岡高裁の進め方に沿って、速やかにまとめるのが望ましい。

 基金案は、これまでの有明海再生の取り組みを加速させるのが狙いだ。アクセルを踏んで伸ばすべきところを伸ばし、広げるべきところを広げるという思いで提案している。アサリやカキなど成果が出てきている部分があり、資源を管理しながら増やす取り組みもできるだろう。タイラギの資源回復などに挑戦することにも基金は活用できる。

 基金は特別で、あくまで和解に伴って提案しており、和解が成立しなければ実現し得ない性格のものだ。基金案は長崎地裁の和解協議の際、有明海の再生や漁場環境の改善を通じて全体的解決を図ることを検討するように投げ掛けられたのを受けて提案した。漁業団体も一緒になって考えて、整理をして、まとめ上げてきた。

 弁護団は和解協議などの場にはしっかり出席をして主張してきたので、今回、出席しなかったのはこれまでにない行動と受け取った。和解協議は継続するので、厳しい状況はあるにせよ、解決に向けてできることをやっていく。

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