古川吉重「L17-8」(1995年、油彩・オイルスティック・画布、178×208センチ、個人蔵)

 ニューヨークを拠点に活躍した抽象画家・古川吉重(1921~2008年)は、佐賀藩10代藩主鍋島直正の側近で書画に通じた古川松根のひ孫にあたる。佐賀を源流に世界へ抽象表現で挑んだ。

 福岡市に生まれ、東京美術学校(現・東京芸術大)では、現代洋画の重鎮、野見山暁治らと共に学ぶ。戦争を挟み教職に就きながら、独立美術協会や岡本太郎らの「アートクラブ」などで活躍。1963年からニューヨークを拠点とし、世界的に評価を受けた。

 60年代に米国を席巻したミニマル・アートの影響を受け、装飾・説明をそぎ落とし、単純な記号的形とモノクロの色面で世界観を表した。本作は色彩を取り入れた80年代を経て、ダークグリーンと鮮やかな赤が幾何学の構図を彩る。大きく蛇行して絵具を塗り込めるタッチが、無機質な形に動きを与える。

 直正に殉じることで最後の表現とした松根。吉重は「生きている限り進化しなければ」と、晩年まで自分の表現を追い求めた。

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 佐賀市の県立博物館・美術館で5月13日まで(月曜も開館)。観覧料は一般・大学生500円、高校生以下、障害手帳を持つ人と介助者1人は無料。

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