国交省の整備方式別の比較検討

 九州新幹線長崎ルートの整備方針を決める与党プロジェクトチームの検討委員会は30日、開発中のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入は「事実上断念」との認識で一致した。国土交通省が示した試算によると、FGTでは山陽新幹線への乗り入れが困難と判明した。代替案の全線フル規格、ミニ新幹線で整備した場合、佐賀県に1千億超~300億円の追加負担が生じるとみられ、時間短縮効果が小さいなかで難しい判断を迫られるのは必至だ。 

 山本幸三委員長(衆院福岡10区)は、2019年度予算の概算要求前の今年夏ごろまでに一定の結論を出す考えを示した。4月中にも佐賀、長崎両県知事やJR九州から意見聴取する。

 試算では、新鳥栖-武雄温泉の整備費はフル規格が6千億円で圧倒的に高額。県の実質負担額は示されなかったが、新幹線スキームで算出すると1100億円程度になる。ミニ新幹線は整備費1700億~2600億円で、県負担が310億~480億円程度。佐賀県が100億円程度と予想していたFGTの追加整備費も800億~1400億円と大きく上回った。

 新大阪駅の受け入れ容量に余裕がなく、長崎ルートからの乗り入れが難しいことも分かった。今後、リニア中央新幹線の地下ホーム整備と併せて検討する。

 費用対効果は新大阪まで乗り入れる前提で算出。フル規格が3・3で最も高く、ミニ新幹線で上下線の一方だけフル規格幅にする「単線並列」案が3・1、上下線とも広げる「複線三線軌」案は2・6だった。FGTは山陽新幹線に乗り入れできないため、算出しなかった。佐賀-博多の所要時間を現状と比較すると、最短はフル規格の15分短縮、ミニ新幹線が5~2分、FGTは2分。長崎-博多ではフル規格が31分短縮、ミニ新幹線は8~2分、FGTは2分となった。

 開業時期は車両開発が順調に進んだ場合、FGTが最も早く2027年度で工期は9年。フル規格は用地買収や沿線自治体の同意にかかる期間を考慮せずに、工期に12年を要し、開業は2036年度。ミニ新幹線は工期に10~14年、開業が34~38年度を見込む。

 FGT導入合意時の佐賀県知事で、検討委メンバーの古川康衆院議員は「佐賀県はこれまでに225億円を支払い、FGTによる関西直通の切符を買った。知事もわれわれも県民への説明に苦慮する。フルかミニかで値切り合戦をするつもりはない」と発言したという。

【解説】

 事実上のフリーゲージトレイン(FGT)導入断念を突きつけた国交省の検討結果。全線フル規格の費用対効果は「3・3」、ミニ新幹線は「3・1」と景気の良い数字が並ぶが、これまで苦渋の決断で長崎ルート計画と向き合ってきた佐賀県にとっては素直に受け止められるものではない。

 費用対効果は便益や収益をコストで割り、「1」を下回れば事業効果が低いとされる。国交省は今回、便益は長崎まで含めた地域全体の数値を使う一方、コストは新たに発生する新鳥栖-武雄温泉にかかる建設費を使った。つまり、武雄温泉-長崎でかかった約5千億円を除いている。

 佐賀県は元々時間短縮効果が少ない中、FGTで関西直通を実現する約束で計画に同意し、既に225億円を支出している。当時の費用対効果は関西直通が前提で「1・1」。計画を信じ負担してきた県民に、今回は「3」と言われても、簡単に追加で1千億円を支払うわけにはいくまい。

 フル規格は時間短縮やJR九州の収益改善の効果が最も大きいが、建設費は最大だ。ミニ新幹線はフル規格に比べ建設費は安いが、時間短縮効果が小さい。佐賀と長崎、JR九州の3者が全員「マル」を付けられる案は存在しない。与党が結論を出す7月末まで、残された時間は余りに短い。

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