新紙幣発行から3日で1年になる。唐津出身の建築家辰野金吾の代表作である東京駅が1万円札の裏面に描かれたのにちなんで、日本銀行は発行時に唐津市に記番号が若い「7」の1万円札を寄贈した。日銀は「広報の一環として一般への公開を前提とした贈呈」と説明するが、現在、市は公開せずに金庫で保管している。
市は昨年7月7日から辰野が監修した旧唐津銀行のガラスケースで公開し、今年3月末で取りやめた。市観光課は「防犯が十分ではなかった」と理由を挙げる。同施設は文化財で、博物館などと違って貴重品を展示する構造や人員体制が整っていない。市役所で展示した時期もあったが、夜間は金庫で保管していた。
日銀に若い記番号の新札の提供を働きかけていたNPO法人「唐津赤レンガの会」の田中勝会長(76)は「珍しい番号で来場者に感動を与えていただけに残念。市民が辰野を誇りに思うためにも公開してほしい」と願う。
日銀の担当者は「具体的な公開方法は贈呈先にお任せしている」と話す。市は旧唐津銀行で見本を掲示している。本物は辰野金吾関係のイベントなどで公開していく方針。記番号「6」を所有する渋沢栄一の出身地の埼玉県深谷市は、市役所の展示ケースで公開を続けている。(宮﨑勝)