ポルターガイスト調査に挑む! 人気ホラーシリーズ第2弾

 ホラー小説のランキングブック『このホラーがすごい!2025年版』が発売になった。何を隠そう、私はホラーというジャンルが物心ついた時から大好きだ(このコーナーでも何回か言っている気がする)。漫画や小説、映画にはじまり、最近はYouTubeや、ポッドキャストもチェックし、通勤のお供はもっぱら怪談という毎日を送っている。出版界における昨今のホラーブームはうれしい限り。当店のそう大きくない売り場にホラーコーナーを常設しているのは、そんな私の嗜好が反映されているからに他ならない。

 ホラー好きを公言し続けていたが、なんとこの度、前述の『このホラーがすごい!』の選者として、ランキングに票を投じることができた。書店員になってこの方、印象深い仕事はいろいろと経験させてもらってきたが、今年の“ベストうれしい仕事”の上位は「このホラ投票」で間違いないし、私が1位に投じた作品『深淵のテレパス』がめでたく第1位に輝いたので、そのうれしさも倍増だ。おめでとう、『深淵のテレパス』…!

 さて今日は、そんな『深淵のテレパス』の続刊にあたる『ポルターガイストの囚人』を紹介したい。ホラーだからと回れ右をしそうな皆さん、ちょっと待って。読まないのは惜しいくらい、面白い作品なんですってば!

 「あしや超常現象調査」というYouTubeチャンネルを運営する芦屋晴子と越野草太は、説明のつかない不思議な現象に悩まされる人々から依頼を受け、その原因の調査を請け負っている。今作は古い一軒家でポルターガイストのような現象に悩まされる男性の依頼を受け、その現地調査に乗り込む。オカルトありきで話を進めるのではなく、さまざまな機器を駆使しながら、あくまでも“現実的に”原因を追及しようとするのが、あしや超常現象調査のスタイル。

 しかし今回も、科学では説明のつかない現象が続発し、調査は混迷を極めていく。この現象がおこる原因は何なのか、ホラー映画にもよくありがちな「呪いの源泉探し」のパターンではあるが、あくまでもリアリティー第一主義の進行と、それでも説明がつかないナニカのバランスが絶妙で、長年その“ナニカ”に魅了されてきた私にはたまらない。

 芦屋晴子はじめ、人間的な魅力あふれるキャラクターたちの奮闘も、ホラー小説でありながら(?)時に笑いと涙を誘う。私は今作、二つの場面で思わず落涙してしまった。物語の構成にもひとひねり加わり、ミステリー小説的なエンタメ性も兼ね備えているし、ラストに至ってはまさに“胸熱”。少年漫画のような手に汗握るアツい展開と、読後のすがすがしさをお約束する。

 怖いけど。確かにところどころ、怖いけど…! 問題児の寄せ集めチームが甲子園で優勝する、ような。ちょっと頼りない探偵バディがアレコレ騒動を巻き起こしながら事件を解決する、ような。そんな物語が好きな読者の皆さんなら、楽しめること間違いなし! 前作『深淵のテレパス』が未読なら、そちらから読むことをお勧めします。

 今年も暑い夏がやってきた。ホラーで涼を取りながら、今年の夏を乗り切りましょう!

本間悠さん

2023年12月、佐賀駅構内にオープンした「佐賀之書店」の店長。自身が作った売り場や本のポップなどで注目を集め、SNSのフォロワー数は1万人以上。多メディアにおいても幅広く活躍中

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