『もじモジ探偵団 文字バンザイ編』雪朱里:著、ヒグチユウコ:イラスト/グラフィック社

 会社の看板や学校の教科書、スーパーのチラシなど、生活のあらゆる場面で目にする文字デザイン。一体誰が、どのように手がけているのだろうか。

 専門誌『デザインのひきだし』の連載「もじモジ探偵団」の書籍化第2弾だ。アイアイ探偵と助手のネコくんが、文字デザインの世界へいざなう。挿絵は、世界的人気を誇る画家・ヒグチユウコさんが担当した。

 缶の底などに印字されている賞味期限のドット文字や「ボンタンアメ」のパッケージのロゴなど、身の回りの文字デザインの裏側に迫る。特に興味深かったのは、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」のPOPについてだ。実は全店舗にいる「POPライター」(通称POPさん)が制作しているそうだ。「ドンキ文字」を描く際のポイントだけでなく、ライターになるまでの流れや、実際にリアルタイムでPOPを制作する様子も掲載されている。

 特別収録として、ヒグチユウコさんの描き文字をフォント化した書体「ヒグミン」の制作にも密着している。2021年にリリースされたが、どのようにして作られたのかを解説していく。独特な世界観を持つ「ヒグミン」のシステム化作業は、根気強さなくしてはできないものだった。太さや震え方、カーブなど、あらゆる要素を細かく分析しながら試作を重ねた。

 身近かつ生活に欠かせないツールだからこそ、作り手の思いや並々ならぬこだわりや信念がこめられている。文字の世界って、奥深い。(グラフィック社/2310円)

(コンテンツ部・池田知恵)