和名にウルシと付けられており、小葉が軸の左右に鳥の羽のように並ぶ葉のつき方(羽状複葉と呼ばれる)もウルシ科に似ているが、実際にはニガキ科の落葉樹である。
ちょうどこの時季に花を咲かせる。虫媒性で、海外での研究事例では、ミツバチや甲虫の仲間が花粉を運んでいるようだ。
ニガキ科は、日本ではニガキ1種しか分布していなかったが、明治初期に中国北部原産の本種が持ち込まれた。日本だけでなく欧米でも、街路樹や庭木などとして重宝されてきた。
成長がはやく、まっすぐに天に向かって伸びるからか、英語ではTree of Heaven(天の木)、ドイツ語ではG〓tterbaum(神の木)と呼ばれる。日本でも、これらを直訳して、別名シンジュ(神樹)と呼ばれることもある。
繁殖力も旺盛であり、しばしば野生化した個体がみられる。日当たりが良いところを好み、とくに河川敷などでは、短期間で大きく育ち、水流を阻害して洪水を誘発する懸念がある。
もともと、ニガキ科のニガキという和名は、樹皮が苦いことから来ている。それと関連しているのかもしれないが、周囲の植物を食べ尽くすニホンジカも口にしないという。さらに、他の植物の成長を妨げる「アレロパシー効果」を持つ化学物質を放出し、在来植物を抑制して繁茂する。
以前も何度か、外来種として問題になっている植物について触れたが、本種もその一つであり、もともとはヒトの都合で、便利な樹木として持ち込まれたものの、一部では想定を超えて野生化・繁殖し、厄介者扱いされている。
例に漏れず、本種も置かれた環境で少しでも多くの子孫を残そうとしているだけであり、ヒトの「言うことを聞かない」のは、当然の帰結であろう。(佐賀大農学部教授)
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