18歳の選挙権年齢が近づく高校生に政治や選挙への関心を持ってもらおうと、佐賀新聞社は6日、小城市の小城高校で主権者教育の出前授業を開いた。1、3年生の計約400人が参加。3年生4人を候補者役にした模擬選挙などを行い、一票を投じる大切さについて考えた。授業の内容を詳報する。(古川浩司)

市の課題、解決策を提示 実現可能性や政策効果で判断
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模擬選挙は、3年生の代表4人が候補者役となる形式で実施した。それぞれが日頃感じている小城市の課題を挙げ、その解決策を演説動画で訴えた。選挙ポスターは4人がインスタグラムの機能を使い、有権者の目を引くように工夫して手作りした。

模擬選挙

池田大駕さん
池田大駕(たいが)候補は、学校間の交流による地域活性化を訴えた。小城高周辺の小、中学校との交流が少ない現状を指摘。合同のスポーツ大会を開いたり、勉強を教え合ったりすることで絆が深まるとし、互いを知ることで地域の安全向上にもつながると主張した。
福原ゆいさん
福原ゆい候補は、人口減少や高齢化が進む中、空き家や耕作放棄地の増加が市の課題だという考えを示した。空き家バンクや農地バンクへの登録を推進することで、市内の住み、働ける場所をPRし、定住人口を増やして地域の活性化につなげたいとした。
島田彩笑さん
島田彩笑(さえ)候補は、バス運行の改善を公約にした。通学のタイミングに合うバスが1本しかないことや、雨の日は普段より車内が混み合って乗り降りが大変という自身の経験を踏まえ、運行本数の増加やバス停への両替機の設置などを働きかける考えを示した。
大薮昂希さん
大薮昂希(こうき)候補は、電車の待ち時間を有効活用するために、駅にトレーニングジムや勉強スペース、カラオケボックスを設置するという大胆な政策を掲げた。人を集めてまちを活性化するには、既成概念をぶち壊し、新しい発想で挑戦することが大切と強調した。
4人の演説を聞いた1、3年生は、誰の考えに共感するか、地域にとっていいことは何か、どれが実現可能性があるかなどを考慮して投票したい候補を選択した。候補者ごとに起立して意思を示した。生徒たちは「一番現実的で身近な問題だと思った」「市民全体のことを考えていた」「自分も同じ経験をして困ったことがあった」「発想が面白かったから」などと支持する理由を挙げた。
■講話 辻村圭介統合編集局次長
選挙で声届けよう

日本国憲法は、主権は国民にあることを明確にうたっている。日本は民主主義。選挙によって代表者を決める。国の政治を決める主権者は国民だ。参院選が7月3日公示、20日投開票の日程で行われる見通しとなっている。皆さんの中で18歳になった人は、いよいよ一票を投じる機会が来る。
3月に小城市長選があった。当選者と次点との差は217票。仮にここにいる皆さんに選挙権があり、投票に行っていたら、結果が変わるかもしれないくらいの僅差だった。1月の唐津市議選は、最後の議席を争った2人が全く同じ票数で並び、公選法の規定でくじ引きで当選者を決めた。「私は行かなくても大丈夫」と思う人もいるかもしれないが、特に地方の選挙はわずかな差で決まることがある。
小城市長選の投票率は、全体で55・23%だった。このうち18歳は48・28%、19歳は37・18%。年代が上がるごとに投票率は高い傾向にあり、60~70歳代は7割くらいが投票している。「シルバー民主主義」という言葉があるが、税金の配分や政策を決める際、投票率が高い高齢者の声が優先されやすくなる。投票に行かないと、子育てや就職、教育の支援など、若い人たちの声に沿った政策が後回しになってしまう恐れがある。不平不満があっても、一票を投じなければ政治家には届かない。選挙に行って、一票の重みを感じてほしい。
選挙は当選者が決まればそれで終わりではない。自分たちが望んだ政策を当選者が実行しているか、投票に行った後も有権者一人一人が見ていかないといけない。それが次の選挙の時の判断材料になる。参議院は衆議院と違って解散がない。参院選では、この人に6年間を任せられるのかも考えて投票してほしい。
18歳になれば選挙権が得られるとともに、選挙期間中に選挙運動もできるようになる。皆さんはいろんなSNSをやっていると思うが、例えば街頭演説を動画で撮影してユーチューブに投稿することも可能だ。ただ、17歳以下は一切できない。「この候補に入れてください」とXでポストしたら選挙違反となり、罰則がある。選挙の公正さを保つために、選挙違反をしないことが大事だ。特に気をつけてほしいのはメール。メールを選挙運動に使えるのは政党と候補者だけで、有権者は一切使えない。そのことは覚えておいてほしい。
■生徒の感想
■自分事として政治に参加していきたいと思った。「分からない、興味がないから行かない」ではなく、ひとりの投票で政治も決まるという思いを持って投票しようと思う。
■みんな具体的で誰に投票するか迷った。他の人たちの意見も聞くことができておもしろかった。
■きちんと勉強してこれからの社会をつくっていかなければいけないと思った。
■選挙のことをより身近に考えることができた。
■自分の住んでいる地域をよりよくしていくためには選挙に行くべきだと思った。
■「よく分からない」で片付けるのではなく、自分から知ろうとする姿勢が大切だと思った。
■選挙違反のことについては何も知らなかったので勉強になった。
■国を動かすということは大きい話で自分には縁がないと思っていたが、選挙を通して間接的に国を動かせると知ることができた。
■演説の内容をしっかり聞いて、自分が何を重要視するかを考えて投票するべきだと思った。
■日常生活と市の問題について深く考えるよい機会になった。
■多面的に考えることの大切さを感じた。
■若者の投票率が思っていた以上に低かったので、有権者の自覚を持とうと思った。
■選挙について分からないことが多いので、新聞などでニュースを見たり、大人に聞いたりして知識を深めようと思った。
■投票に行く意欲が高まった。
■ニュースなどでどんな政党がどんな政策をしているのかを知って、投票に行きたい。