ちょっとした広場や空き地に集まって、ここが一塁、あちらが二塁と地面に小石で書いたらプレーボール。ふわふわのゴムボールをバット代わりの素手で狙う。遠いむかし、三角ベースの手打ち野球で遊んだ思い出をお持ちの方は多かろう◆高価な道具は買ってもらえない、でも野球がしたい…。いじましい知恵が編み出した遊び。それが今や国際ルール化され、男女混合5人制の「ベースボール・ファイブ」として世界大会も開かれているという。たかが子どもの遊びとあなどるなかれ◆近ごろ手打ち野球の人気はどうだろう。女の子がはしゃいだゴム飛びなんかも。いつからか、子どもが大勢で外遊びする光景を見かけない。少子化に加え、塾や習い事で忙しく、安心して遊べる場所も少ない。仲間、時間、空間という三つの「間」に恵まれない時代らしい◆一方、スマホやゲームに熱中する時間は増え、視力低下が進んでいる。京都大の研究では、2020年時点で14歳の男女83%が近視だったという。6歳で視力1・0をめざそうと、10日は「こどもの目の日」だったが、浸透はこれからである◆台湾では小学生に1日2時間以上、屋外での活動を勧めたところ、視力改善に効果があったとか。さぁ、ここは往年の手打ち野球の名手たちの出番ですぞ。〈児(こ)と遊ぶ雲は樹(き)になり象になり〉永田安親。(桑)
下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。