民主党政権時代に首相を務めた鳩山由紀夫さんは15年前の2010年6月、政治とカネの問題で退陣を余儀なくされた。政界を引退後、ペンネームなどに「友紀夫」を使い始める。信条とする「友愛」を広めたいからだった。その思いには賛同する◆友愛とは互いを尊重し、大切にする心。言い換えれば見返りを求めない愛といえる。そんなつながりが多い人は幸せである。一方、この2人は友愛とは対照的だ。トランプ米大統領と実業家のイーロン・マスク氏である。マスク氏は昨年の大統領選でトランプ氏を支援し、第2次トランプ政権では重要な役職を任された◆その関係が急速に悪化、決裂状態に陥った。減税政策が引き金といわれるが、互いの悪口を言い合う姿はまるで子どものけんかのよう。人を「利用価値」でしか見ていない気がする。損得でつながる関係のもろさを証明する。2人の対立が世界の分断をさらに悪化させないかと心配にもなる◆さて、愛という漢字の部首は「心」だが、小さくて気づきにくい位置にある。心の奥深くでそっと相手を思う気持ちを表したのかもしれない◆日本赤十字社の創始者で佐賀七賢人の一人、佐野常民は博愛精神を掲げた。友愛、博愛、慈愛…。「愛のかたち」はいろいろでも、出発点はきっと、心に芽生えた小さな好意。大切に育てたい。(義)

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