秋の宮中祭祀(さいし)「新嘗祭(にいなめさい)」に献上する米の御(お)田植え式が8日、有田町北ノ川内の水田で行われた。「令和の米騒動」の行方が見えない中、地元の農家や早乙女姿の子どもたちが苗を手植えし、将来もこの地で米作りが続くよう願った。
佐賀県では県内を5地区に分け、毎年持ち回りで献穀農家を選んでいる。今年大役を担う古川法秋さん(72)は、親の手伝いをしていた頃から60年間にわたり米を作ってきた。献上米は国見山系の麓にある棚田の一画で育てる。
式であいさつをした古川さん。家族に「(晴れの場で)愚痴ばっかり言うたらいかんよ」と念押しされていたが、米は安ければいいという世間の声に、中山間地の生産者として異を唱えずにはいられなかった。「日本の農業、食糧自給をどうするか。関心が高まったこの機会に、みんなでしっかり話し合ってほしい」。水をたたえた棚田を眺めながら語った。(青木宏文)