ラッコのぼのぼのの森での日常を描いた4コママンガだ。海で一緒に暮らすお父さんや、森に住む友達のシマリスくんやアライグマくんたちとのやりとりが繰り広げられる。
幼いときに好きだったマンガの一つだった。もちもちなビジュアルと、ほどよいギャグが子ども心に刺さった。時は流れて高校生になり、クラスメートにぼのぼののイラストを描いてあげた。絵筆を走らせているうちに見事に再熱した。定期的に会いたくなる作品だ。
『ぼのぼの』の魅力は何か。スローリーで、時に詩的で哲学的。無言のシーンの心地よさや、独特な緩急の付け方からは、この作品でしか味わえない何かを感じる。素朴ながらも深い言葉は、世の中を知った大人こそ響くものがあるように思う。
その中でも私が最も好きなのは、「汗の表現」だ。困ったときなどによく、頭上から汗がぴよぴよ飛んでいる。本人たちは焦っているのだが、その様子がなんだかほほ笑ましくて、毎回口元に笑みが浮かんでしまう。
社会人になって、久しぶりにぼのぼのたちのいる森に“訪れて”みた。「深いなぁ」と言いながら、時間を忘れてページをめくる。懐かしさと澄んだ空気が、疲れた心に染み入った。時の流れに追われ、俗世にもまれた大人にこそ効く作品なのかもしれない。(竹書房/990円)
(コンテンツ部・池田知恵)