戦場というと、砲弾飛び交う派手なドンパチばかり思い描くが、実際には違うらしい。南方ニューギニア戦線でかろうじて生きのびた元経団連会長、平岩外四さんが語っている。「体一つで上陸をして、その島に兵隊がただ住んでるというだけ。そういう戦争でした」◆食料は現地調達。だから武器も敵を狙うより、食べられる魚や生きものを捕まえる道具である。食べ物がなくなり、兵士たちは次々に命を落とす。これでは戦力にならない。おびただしい犠牲の果てに日本が戦争に敗れたのは、こうした「補給」の軽視にあった◆人間の祖先が二足歩行を始めたのは、食料を運ぶためだったとか。遠くまで探しに行った木の実を仲間のいる場所まで届ける。それを安全な分け前として仲間たちが口にする。人間社会の「信頼」は物の受け渡しによってはぐくまれた◆いま、そんな信頼の基盤がほころびつつある。運輸業界の人手不足は深刻で、佐賀県は外国からトラック運転手の受け入れに取り組むという。佐賀市営バスも高卒の新規採用で運転手育成を進める◆中国の故事に「犬の功と人の功」とある。戦場の活躍は「獲物を捕らえた猟犬の功績」にすぎない。補給など裏方の軍功は目立たないが、「猟犬を操る人間の功績」として大いに報いられるべきだと。信頼を支える「人の功」に光を当てたい。(桑)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。