オジロアシナガゾウムシ 撮影・加藤俊英

 国内では本州、四国、九州などに生息する体長1センチほどの昆虫である。

 マメ科のクズが主な食草で、幼虫は茎に虫こぶを形成し、その中で成長する。

 クズは北米などで野生化し、大繁茂して問題になっている。本種を導入してクズを抑制できないか検討されたこともあるが、ダイズなど他のマメ科植物を食べる可能性が否定できず、見送られたようだ。

 成虫は春から初夏にかけて見られ、体表面はゴツゴツしており非常に硬い。また、刺激を与えると脚をたたんで落下し、擬死(死んだふり)をする。

 白と黒のはっきりとした体色が特徴で、「パンダムシ」や「パンダゾウムシ」と呼ばれることもある。きちんと検証されてはいないが、本種の成虫は、鳥の糞(ふん)に擬態しているといわれている。

 本種のほか、クモの仲間やチョウ目の昆虫などにも同じような見た目の種が知られている。

 このように、無生物や無害なものに見せかける擬態は、「マスカレード(masquerade)擬態」と呼ばれる。マスカレードとは、仮面舞踏会、あるいは、仮装・変装といった意味である。

 視覚に頼って獲物を狙う鳥類のような捕食者から逃れるのに有効とされる。その効果を検証した事例は少ないが、木の枝にそっくりなシャクトリムシを用いた研究では、鳥が実際に枝と誤認し、捕食されにくいことが実証されている。

 ヒトの社会でいう「認知バイアス」、いわゆる思い込みや先入観を逆手にとった生存戦略と言える。

 生成系AIの台頭もあり、真贋(しんがん)を見分けるのがますます困難な時代になったが、本質を見極める力だけは私たち自身で持ち続けたいものである。(佐賀大農学部教授・徳田誠)