四章 夏のひとり唄(23)【夏音譚(なつねたん)】 咄嗟(とっさ)に名は出ずとも私にも見覚えがありました。小姓衆の御方でございます。「も、申し訳ございませ――」「いやいや、落ち着け」 私が謝ろうとするのに対し、その御方は慌てて諸手(もろて)を突き出して制止されました。「はい。