「受賞が発表された日は電話が鳴りっぱなしだった」と話す江島稲香さん=佐賀市の自宅

大賞 委嘱 少字数書「雲海」 江島稲香

 佐賀市の江島稲香(とうこう)さん(84)は、躍動感あふれる少字数書「雲海」で大賞に輝いた。墨の色にこだわり「悪戦苦闘した」という力作で、高い評価を得た。

 「少字数書は紙と墨が命」と語り、寝かせて水分を抜いた紙に薄墨でいきいきと二字をしたためた。書に向かう時間は集中でき、生活の中でなくてはならないものになっているという。

 20歳で結婚し、男児2人をもうけた。2020年に亡くなった夫の直(すなお)さん(享年84)から20代の頃、「好きなことをやってごらん」と勧められ、好きだった書道を習うようになった。「あれがなかったら今はない」と感謝を語る。

 現在は竹之内幽水さん(佐賀市)に師事しながら、西川副公民館と自宅で約20人の生徒を指導している。子どもが恋愛など秘密の悩みを打ち明けてくれ、成長して訪ねてきてくれることが喜びで、「体が続く限りは教えたい」と意気込む。

 受賞が発表され、公民館では拍手とともに花束を渡された。久しく連絡を取っていない人からは「まだ頑張りよったな」と電話があった。「やっぱり大賞がほしかった。夢がかなった」と笑顔を見せていた。(花木芙美)