山と清流に囲まれた唐津市浜玉町山瀬地区で、解体も検討されたかやぶき屋根の茶室が建設当時の姿を取り戻した。40歳で人生の転機を迎えた小林義清さん(73)がほぼ一人で造り上げた「山瀬の里キャンプ場」。そのシンボルである茶室は2023年7月の大雨で床下浸水したが、「心を癒やす場所を守りたい」と修復に取り組んだ。
小林さんは実家で農林業を手伝い、結婚を機に22歳で山瀬地区を離れた。唐津市内にマイホームを購入し、子ども3人に恵まれた。不惑を迎え「人生の目標を満たした」と感じた1990年代前半、家族の手伝いで再び地元に通い始めた。
当時は地区を離れる住民が相次ぎ、過疎化が進んでいた。「山里の文化を残したい」と10年以上をかけてかやぶき屋根の母屋や茶室を建て、五右衛門風呂、サウナ、バーベキュー場、釣り堀も手がけた。「キャンプにぴったり」という来場者の声を受け、2020年にプライベート感を重視したキャンプ場を開いた。
2年前の大雨では、キャンプ場に架かる橋2本が流され、茶室も床下浸水の被害に遭った。知人らの応援を受けて約3カ月で復旧したが、築20年で老朽化も進んでいた。解体も検討したが、「この空間を壊すのはもったいない」と存続を願う声が上がった。
屋根は4月下旬から5月上旬にかけて修復した。小林さんが近隣の耕作放棄地から約千束のかやを刈り取り、修復は職人に依頼した。今後は室内のメンテナンスを行い、7月中の完了を目指している。
小林さんは「夏は新緑、秋は紅葉など四季を五感で体感できる場所。抹茶を飲んでもらい、いろりを囲んで昔話や世間話をして癒やしを届けたい」と話す。問い合わせは小林さん、電話090(2097)3388。(松岡蒼大)