小城藩の歴代藩主家と藩校の蔵書「小城鍋島文庫」を読み解く『小城鍋島文庫の古典籍たち』を、佐賀大の中尾友香梨教授ら研究会が出版した。12年にわたって文庫の調査に当たってきたメンバーが、それぞれの個性を生かした語り口で解説し、古典籍研究の在り方にも一石を投じている。

 中尾教授は文庫蔵書のうち、江戸前期の儒学者・神道家の山崎闇斎(あんさい)が神道と朱子学を融合させて興した「垂加神道」の軸となる書物『中臣祓風水草(なかとみのはらえふうすいそう)』に着目した。所有者の変遷をたどり、小城藩儒下川家に連なる下川士行が江戸中期の本草学者・松岡恕庵から授けられたと突き止めた。