昔話の『桃太郎』はおじいさんが山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行く場面から始まる。うがった見方かもしれないが、この物語を知った幼い頃から「男は外で仕事、女は家事」という役割分担が刷り込まれた気がする。わが身を振り返っても家のことは妻に頼ってばかり◆そんな固定観念の打破につながっただろうか。1985年5月17日に「男女雇用機会均等法」が成立してからきょうで40年になる。この法律は募集時点から職場での性差別を禁止するもの。だが、意識改革はそれほど進んでいない。雑用を女性に押しつける職場は少なくなったと信じるが、昇進や賃金面での性差別は残る。日本はまだまだ男性優位社会。「ジェンダー平等」の道のりは険しい◆「ダグラス・有沢(ありさわ)の法則」と呼ばれる法則がある。世帯主の所得が高いと配偶者の就業率が低くなるというもの。逆に言えば、夫の所得が低いと妻は働きに出ざるを得ないということか。共働きのわが家も当てはまる。耳が痛い◆ただ、先日亡くなったウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領はこう言った。「貧しい者とは少ししか持っていない人間のことではなく、もっと多くを渇望する人のこと」◆桃太郎に限らず昔話に登場する老夫婦の多くは、貧乏でも幸せそうだった。富も負担も分かち合うことが大切。(義)
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