3月に致遠館高(佐賀市)の理数科を卒業した福田和真さん(18)が、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が設立した財団の奨学金を利用し、米国のワシントン大に進学する。奨学金を受けられるのは、米英のトップクラスの大学に進む全国の約40人。難関を突破し、生物学の研究者になる夢に向けて一歩を踏み出す。
「柳井正財団」が運営している海外奨学金プログラムは、米国と英国の大学に進学する学生に対し、年間10万5千ドル(約1500万円)を上限に返済不要の給付型奨学金を支給している。
福田さんは、科学部で鳥インフルエンザの感染状況や、植物の発芽を抑制する効果がある成分「クマリン」について研究。生物学の研究者を志すようになり、「研究施設や環境が充実している海外に出て、さまざまな人に会いたい」と海外の大学受験を決意した。
大学受験や奨学金プログラムの選考では英語での面接もあり、参加した学会などで留学生とディスカッションを重ねるなどして語学力を磨いた。面接では、研究内容について「クマリンは桜餅の香りの成分」などと身近な例を交えて分かりやすく紹介。「自分のアイデンティーを分かりやすく伝えられた」と手応えを感じた。
9月に入学するワシントン大は、医学・生命科学分野の研究環境が充実している。細胞の研究に興味があり、「単細胞生物から多細胞生物になる進化の過程を明らかにして、細胞同士の情報伝達の仕組みを解明したい」と夢を描く。
トランプ大統領が就任した米国では、環境問題でも自国第一主義の風潮が高まっている。福田さんは「世界の研究者とつながりを深め、足並みをそろえて社会課題を解決するための橋渡し役になりたい」と語る。(秋根紗香)