赤ちゃんのワクチンデビューは、日本では生後2カ月です。通常のスケジュールでは1歳になるまでにワクチン注射を11本(ハンコ注射といわれる結核予防のためのBCG接種を含む)、1歳から2歳までにワクチン注射を3本、計14本の注射を行います。

 これらのワクチンを終了するためには、2年間で7、8回小児科を受診しなければなりません。注射の本数より受診回数が少なくてすむのは、同時接種を行うことができるからです。

 この時期の注射のワクチンで予防することができる病気は、B型肝炎、肺炎球菌感染症、結核、水痘、麻しん、風しん、ジフテリア、破傷風、百日咳(ぜき)、小児まひ、インフルエンザ桿(かん)菌b型感染症です。その他にロタウイルスワクチンを経口で接種します。

 同時に接種できる数に制限はありませんが、生後2カ月の最初のワクチン接種時には普通3本の注射を上腕もしくは大腿(だいたい)部にします。赤ちゃんは大泣きをしますし、お母さんやお父さんにとっても、受診回数を考えると大変な手間です。

 残念ながら日本のワクチン行政はとても遅れていましたが、徐々に改善されてきていて、ようやく世界の標準に近くなってきました。ワクチンの同時接種を容認・推奨するようになったのは2014年で、異なるワクチンの接種間隔について制限がなくなったのは20年からです(注射の生ワクチンは除く)。1本の注射に複数のワクチンを混ぜた混合ワクチンも以前は2種混合と3種混合でしたが、3種混合は4種混合となり、24年4月から5種混合ワクチンとなって負担が軽減しています。

 ちなみに、戦後まもなく生まれた私は、これらのワクチンの恩恵をほとんど受けることができませんでした。麻しんも、水ぼうそうも、風しんも罹患(りかん)してひどい目にあいました。小児麻痺(ポリオ)、日本脳炎で同級生を亡くしています。

 今でも母子手帳のワクチン欄が真っ白の子に時々遭遇し愕然(がくぜん)とします。ワクチンは子どもたちにとって何ものにもまさる贈り物です。その恩恵を放棄する手はありません。

 (佐賀整肢学園からつ医療・福祉センター顧問、佐賀大学名誉教授 浜崎雄平)