モンシロチョウと同じ属で、どちらもアブラナ科植物を食草とする。見た目もよく似ているが、本種の方がやや大型である。
モンシロチョウは主としてキャベツ畑のような日なたの環境に生息しているのに対し、本種はどちらかというと日陰に多い。
昆虫では、体の大きなメスの方がたくさん卵を産む傾向があり、オスから人気の場合が多い。そして、モンシロチョウのオスは本種のメスにも求愛するらしく、「人気者」になり過ぎるため、日なたでは落ち着いて産卵ができないようだ。
加えて、モンシロチョウは本種より卵期間が短く、早くふ化して本種の卵を食べる場合もあるそうで、このようないくつかの理由から、本種は日なたを避けているのかもしれない。
モンシロチョウ属の幼虫(アオムシ)には、アオムシサムライコマユバチという天敵の寄生バチが知られている。このハチは、モンシロチョウの幼虫の体内では発育でき、寄生された幼虫は死んでしまうが、本種の場合、幼虫体内の血球がハチの卵を包囲して殺すため、寄生から逃れることができる。
東京都における過去の両種の生息状況を調べた研究では、1960年代まではモンシロチョウの方が多かったが、70年代から80年代にかけて本種が増加し、90年代以降には本種が減って再びモンシロチョウが増加しているという。
この変化の原因は確定されていないが、本種の増加はビルなどによる日陰の増加、モンシロチョウが好むキャベツ畑の減少など、近年の減少は、気温の上昇や家庭菜園の増加に伴うモンシロチョウの復活などがあげられている。
似たもの同士の間にもさまざまな優劣があり、わずかな環境の変化により、その立場は逆転するようだ。(佐賀大農学部教授・徳田誠)=毎週日曜掲載