Q 佐賀弁で「イガ」って何のこと?

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 A 佐賀中央部では、「赤ん坊」のことを、「あかご」「あかちゃん」などいうのであるが、これを伊万里の大川地方では「イガ」という。

 この「イガ」は「イカ」の転化であるが、「栗(くり)のイガ」などの「イガ」の語源である「イカ」とは、語源が違っていて、古人が聞いた赤ん坊の泣き声の擬声語である。『栄華物語』に「御子、イカイカと泣き給ふ」(一、月宴)とあり、『今昔物語』にも「児ノ音(こえ)ニテ、いかいかと泣クナリ」(二七の四三話)とある。

 つまり、「赤ん坊」を「イガ」というのは、自動車の幼児語が「ブーブー」であり、「蟬(せみ)」を「セビ」というようなものである。なお、「栗のイガ」の「イガ」は、古語の「イカシ(厳)」の「イカ」の転で、佐賀地方では「イゲ」といわれる。

 ■出典:志津田藤四郎著「佐賀の方言」(佐賀新聞者刊)