津波が漁港に与えた衝撃を伝えるパノラマ写真。災害に備える大切さを訴える山下さん=佐賀市のイオン佐賀大和店のイオンホール

線路のレールがぐにゃりと曲がり垂れ下がった写真=佐賀市のイオン佐賀大和店のイオンホール

作品をじっくりと眺める来場者

 佐賀新聞創刊140周年記念展「と或るボランティアの心に残る情景 東日本大震災の記憶を語り継ぐ」(佐賀新聞社主催、佐賀県、佐賀市後援)が15日、佐賀市のイオン佐賀大和店2階のイオンホールで始まった。東京都の写真家山下誠一さんが震災ボランティアとして活動しながら撮影した25点を初めて公開した。生々しい災禍を今に伝え、被災後に開花する桜など命の力強さも感じ取れる展観となっている。30日まで。

 山下さんは震災発生1カ月後にボランティアとして宮城県石巻市に入り、スタッフの輸送などに取り組んだ。その翌月から「記録撮影ボランティア」として岩手県内を回った。撮りためた千枚以上はすべて14年間封印しており、今回初めて公開した。

 写真は、「出雲民芸紙」という温もりを感じさせる和紙に印刷した。倒壊した家屋や土砂が埋め尽くす中、被災前と同じように春が訪れた桜の写真に「木の3倍の高さの津波が襲ったのに、咲くのが信じられなかった」と山下さん。カラスがくっきりと羽の輪郭を浮かべて飛び立つ様子、防災無線で住民に避難を呼びかけ続けた建物の写真を展示した。パノラマ機能を使った作品からは、小さな漁港が広範囲に受けた津波の衝撃が伝わってくる。

 会場を訪れた高校教諭の廣重円さん(63)は「映像と違い、止まった状態をじっくりと見ることで衝撃を感じ取れる。幼くて当時を詳しく知らない教え子たちにも見てほしい」と感想を述べた。

 山下さんは「日本人であれば、この震災は人ごとではない。いつ我が身に降りかかるかという意識を持ってもらう機会になれば」と訴えた。(福本真理)