「お金」って難しい。きのうの本紙で三つの記事に考えさせられた。一つは生活保護の基準額を巡る裁判。引き下げを違法とする受給者の訴えに対し、佐賀県の訴訟は控訴審でも退けられた◆物価高が続く中、受給者は今、1円単位で生活を切り詰めているのではないだろうか。困窮の全てが「自己責任」ではないはず。競争社会の中で生きづらさを感じる人もいる。他の高裁では減額を違法とする判決も出た。生活保護は憲法第25条が保障する「生存権」の最後のとりで。しっかり審議したい◆もう一つは石破茂首相が自民党の1期生議員に1人当たり10万円分の商品券を配っていたという記事。「政治とカネ」の問題に加え、庶民感覚とはかけ離れていると感じる◆最後はオンラインカジノの推計記事。警察庁の調査によると約337万人が経験し、年間の賭け金総額は約1兆2423億円に上るという。個人の財産だからとやかく言えないものの、海外の違法業者に潤いを与えるより生活保護受給者に回った方がいいと考えるのはおかしいだろうか◆カジノに手を出す背景には貧困もあるかもしれない。不況は人々から心の余裕を奪う。その結果、弱い立場の人に手を差し伸べる優しさを失っていないかと自問する。お金で買えないものもある。お金はやはり、どう生かすかが大切である。(義)
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