星空も冬から春の星座に移り変わる季節となりました。オリオン座の東側、冬の最後の星域は微光星は多いものの、ぽっかりと広い空間があります。古代ギリシアではここには星座はなかったのですが、1613年に天文学者プランシウスは、ここに「いっかくじゅう座」を設置しました。一角獣は想像上の動物で、シカのような体で、額からは一本の長いまっすぐな角が生えています。
プランシウスは、ここに一角獣を置いた理由を述べていません。しかし、彼が考案した星座にはある特徴があります。プランシウスが設置して現存している星座には、いっかくじゅう座の他、みなみじゅうじ座、はと座、きりん座の4星座がありますが、これらは、ほとんどがキリスト教の古典に由来しているものばかりです。これは、プランシウスが牧師だったことが関係していることは間違いないでしょう。一角獣の伝説はキリスト教世界で醸成されたものですし、はと座は「ノアの方舟の鳩」をモデルとしています。
ひとつだけ、謎が残っている星座が「きりん座」です。元は旧約聖書に出てくるラクダを想定していたものが、その後の星図製作者たちによりキリンに置き換わったという説があります。これは、ラテン語で「ラクダ/Camelus」と「キリン/Camelopardalis」が似ているために、取り違えがおこったのではないかという訳です。
みなみじゅうじ座は、沖縄以南でないと見られませんが、いっかくじゅう座、はと座、きりん座は、この時期に見やすくなります。とはいえ、いずれも星座のすきまに設置されたものですので、夜空に見つけ出すのは意外と骨が折れます。ぜひ、星図片手に挑戦してみてください。
文・早水勉(佐賀市星空学習館副館長)
イラスト・橋本章斗(同館)
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