プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんと、漫画『カードキャプターさくら』などで知られる創作集団・CLAMPがタッグを組んだ。文章は羽生さん、絵はCLAMPがそれぞれ担当した。
本作品が誕生したきっかけは、2023年の単独東京ドーム公演「GIFT」。羽生さん自らが制作総指揮を務め、半生とこれからを氷上で表現した。公演に続き、絵本という形で、世界中のファンへのプレゼントとして生まれた。
この本の主人公は、純粋無垢(むく)な“ちいさいさん”と、ダークな雰囲気に包まれた“おおきいさん”。彼らが羽生さんの文章をさらに彩っていく。ページを開いてすぐに、曲線や青の美しさに引き込まれた。特に、ちいさいさんの背中に生えている羽や、たくさんの傷がある月の美しさには息を飲んだ。見開きで迫力も満点。数々の名作を生み出したCLAMPの技術力の高さに圧倒された。
羽生さんの文章を読んだ印象は「透明できらきらと輝いている」。慎重に、大切に言葉を紡いだことが伝わった。それと同時に、純粋さや悔しさ、羨望(せんぼう)…彼を構築するあらゆる要素がちりばめられている。氷の上を舞う彼は神秘的なイメージがあるが、誰よりも努力を重ねて今の姿があることが伝わった。
プロフィギュアスケーターとして、一人の人間として…。羽生さんのさまざまな思いが、言葉の一つ一つに込められている。羽生結弦の繊細で、等身大の一面を見たような気がした。(講談社/3300円)
(コンテンツ部・池田知恵)