ヤシャブシは日当たりのよい山地に生える高さ5~7メートルの落葉小高木です。花は早春、葉が芽吹く前に開きます。雌雄異花で雌花は円柱状で直立、雄花は垂れ下がって伸びるように咲きます。
薬用部分は約2センチの黒い松ぼっくりのような堅い実でやけどや凍傷に用います。また収斂(しゅうれん)作用があるタンニンが含まれています。
このタンニンは染料でもあり歯を黒く染める“お歯黒”に使われます。これは平安時代に成人女性の証しとして始まり、明治時代には既婚女性のしるしとなりました。お歯黒ではタンニンを含む五倍子(ヌルデの葉にできた虫こぶ)と鉄くずを酢酸に溶かした鉄漿水(かねみず)を混ぜた液で歯を染めます。
ヤシャブシはこの五倍子の代用品であり、実の凸凹が夜叉の顔のようであることから名付けられました。(中冨記念くすり博物館)