序章(8)「追い付けたな」 もう一人は巧みに馬首を巡らして初めて口を開いた。「加藤様まで」 こちらも小姓衆の一人、加藤孫六嘉明(まごろくよしあき)。元々、三河国の国人(こくじん)であったが、父の代に一向一揆に加わって本貫地(ほんがんち)を失った。